映画『罪の余白』で、娘を亡くした父親を熱演している俳優・内野聖陽さん(47才)。内野さん扮する安藤聡と、娘の死の真相にかかわりのある娘のクラスメート・咲(吉本実憂)の心理戦が見どころ。吉本演じる恐ろしい女子高生に翻弄され、苦悩する父親に引き込まれます! 劇中ではそんな姿を見せる内野さんですが、普段はどんな男性なのでしょうか?
(取材・文/活動屋映子)
―─月並みですみませんが、俳優にならなかったらどうしていたと思いますか?
「う~ん、なんでしょうね。いずれにしろ、ものを表現する職業に就きたいとは思ってましたけどね」
―─役に入っていないときは、どんな感じなんですか?
「目標を失ったダメな自分ですね。糸が切れたタコ(笑い)」
―─どっかへ飛んでっちゃう?
「いやいや。飛んではいかない。ボーっとしながら、こんな時間も大切かな、と思うことにしています」
―─実際はそんな時間もなく、スケジュールが詰まっているそうですね。
「あ、ぼくは不器用なんで、仕事が重なることは絶対にしないんです。一作を完全に終えてから次へ行くように。でないと、役の造形が浅くなっちゃうんで。その点、舞台はいいんですよね。稽古期間が必ずあるんで。ところが無理やりにねじ込んでくるのもあって…(笑い)」
―─仕事のない日は何をしているんですか?
「よく聞かれますけど、趣味もあんまりないですね。最近は…自転車、自分でこがないやつね(と、目がキラリ)」
―─誰かに乗せてもらう?
「ぷっふぁ、電動アシストですよ。坂道がやたら楽なんです」
―─ああ、お年寄りがよく坂道で追い抜いていく、アレですね!
「いやいや、お年寄りだけじゃなくて、かっこいいですよ!!(笑い)。最近はママチャリだって進化しているんです。すごいパワーで。電動もね、いろんな種類があって。パーツごとに好きなの選んでカスタム仕様にできるんです。グリップもタイヤの色まで変えられるから、必要以上にお金かけて…(笑い)」
―─で、突っ走るわけですか?
「24kmぐらいしか出ませんよ。それ以外はアシストしないもの」
―─ビールがお好きだとおっしゃってましたが、飲むとカラオケも?
「カラオケは好きじゃないですね。無理やり歌わされるのが、イヤなんですよ。仕方ないから昔のアニメソングとか歌いますけどね。で、心にもない拍手をもらうとか、ガンガンがなるように歌うやつとか、下手くそなのにもつきあわされて。飲んだ後に行くカラオケ・コミュニケーションが嫌いなんですよ。しっぽり歌うのはいいんですけどね」
―─あははは(率直な物言いに思わず)。ちなみに昔のアニメソングって?
「十八番は『およげ!たいやきくん』。あはは、たいやきくん、しっぽり歌われても、ですよ、あはは」
どんな問いかけにも即座に返してくれ、ユーモアがあって、あらためてなんていいんでしょ!とうっとり。
―─プライバシーに踏み込みますが、今はおひとりですよね。
「ご存じのとおりバツイチです」
―─もったいない!
「もったいない、ですよね(笑い)」
―─再婚しないんですか?
「答えは単純、ご縁がないだけです」
―─そんな~、ご冗談を!
「寂しいもんですよ、仕事ばっかりしていたら。どういうところで会うんですか?」
―─えっ、撮影現場は美女だらけじゃないですか。
「仕事の場は仕事で戦争状態ですからね。仕事を離れたら、こもってるわけじゃないけど…自転車では触れ合いがないし(笑い)」
―─来年は、NHK大河ドラマ『真田丸』で徳川家康を演じます。「鳴くまで待とうほととぎす」ですか?
「話をいただいたとき、ぶったまげました。私に家康かよ、って。鳴くまで待つ発想がないし、鳴かぬならひねりつぶすんじゃないかな(笑い)」
―─仕事に限らず、これからの人生に思うところをお聞かせください。
「内面は情熱的な、熱い人間だと思うんですけど、それがストレートに出るのも気恥ずかしいんで、外づらはさらりとして内面はどろどろ、かな。演技でも“ゆるキャラ”が出せるような幅を出したいですけどね」
この作品で娘を失って壊れていく男を演じ、その苦悩の姿がセクシーで、とくにうっすらと伸びたひげがたまらなく魅力的だった彼。で、会ってみたら、誠実に言葉を選んで、こちらの目を見つめながら笑顔を絶やさず、ゆっくりと話す姿に人間的な魅力を感じて。つい、理想の女性像を聞き忘れました。それはまた次の機会に。
撮影■矢口和也
※女性セブン2015年10月15日号