10月中旬から11月にかけて、市区町村から、住民票に記載されている住所(10月5日時点)に、マイナンバーを知らせる「通知カード」が送られてくる。マイナンバーとは、年金や、保険、収入など、「社会保障と税」を管理する12桁の番号のこと。これまで年金や、支払っている税金など、バラバラの機関に登録されていた情報がひとつの番号で管理されることになる。
40年以上前から“国民背番号”制度の導入は検討されていた。長年の議論を経て、今回導入された大きなきっかけは、2007年の5000万件もの「消えた年金問題」だ。税理士の青木丈さんが言う。
「年金保険料を納めていたのに、年金記録がなくなってしまい、本来支払われるはずの年金が支払われないという、あってはならないことが起きました。記録を遡ろうとしても、結婚で姓が変わったり、住所が変わっていたり、入力ミスがあったりと、記録が見つからない人が今も多くいます」
名字や住所の表記が数種類あることも、混乱の原因となった。
「たとえば、日本人の名字で、『ワタナベ』は多いですが、日本は旧字、外字を含め漢字の種類が多く、『ナベ』だけで『邊』『邉』『辺』など65種類の漢字があります。また、同じ住所でも『2―2―2』や『2丁目2番地2号』と表記の違いがあるので、名前と住所だけで個人を特定して完全に紐づけすることは、不可能だったのです」
マイナンバー制度が導入されることで、ひとつの番号で個人を特定できるようなり、記録がなくなるといった問題が起きにくくなる。
また、2011年に起きた東日本大震災では、避難した多くの人が着の身着のままで、免許証やパスポート、印鑑、通帳、キャッシュカードを紛失したり消失した。結果、金融機関でお金を引き出そうとしても、本人確認ができなくてお金が引き出せないなどの混乱が起こった。マイナンバーは、そうした混乱防止に役立つと期待されている。
個人を特定しやすくなることによって、実際に社会がどう変わるのか? 家計の見直し相談センター代表で、ファイナンシャルプランナーの藤川太さんは、その目的と効果を「税制度の透明化と社会保障の公平」だと言う。
「税務署と社会保険事務所など、行政機関をまたいで個人情報を管理できるマイナンバーがあることで、正確な所得や納税額が把握されます。それによって、脱税などを今以上に予防できる。また、収入が把握されるので、生活保護の不正受給が解消されるでしょう」
※女性セブン2015年10月15日号