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【書評】ネットいっさい使わない12人がどんな人物かに迫る書

【書評】『あなたを選んでくれるもの』ミランダ・ジュライ著・岸本佐和子訳/新潮社/2484円+税

【評者】山内マリコ(作家)

 インターネットの登場は、人々をネットを使う人と使わない人の二種類に分断してしまった。より広い世界を知るツールであるはずのネットだが、使いこなしている前者はなぜか、息苦しい閉塞感に苛まれることが多い。

 この本の著者、映画監督や小説家としても活躍するアーティストのミランダ・ジュライもまた、映画の脚本執筆という大事な仕事のさなかにネットにがんじがらめになり、もがき苦しんでいた。

 彼女の住むカリフォルニアでは、不要になったものを売る個人広告の無料冊子『ペニーセイバー』が、毎週火曜日に届けられるという。ネットに溺れていたジュライは、遅々として進まない執筆を放り出し、この前時代的な発行物に広告を出す人々に会いに行くことにする。

 革ジャンを売る性転換中の60代のマイケル、5ドルでドライヤーを売る顔中ピアスだらけの謎の女性ダイナ。

 やがてジュライは、記念日ごとに妻に自作の、ちょっとエッチな詩を贈りつづける81才のジョーと出会うのだった。

 本書は、彼女が邂逅した12人のインタビュー集である。貧しい移民男性もいれば中産階級のご婦人もいるが、みな一様にネットを使わず(なぜならパソコンを持っていないから)、その人間性や写真に収められた生活ぶりには、ヒリヒリするような生々しさがある。

 そして彼らはインタビューを試みるジュライに対して、無防備なほどオープンで、その「ネット登場以前の人間らしさ」は、それだけでなんだか胸に来るものがあるのだ。とりわけ、チャーミングで善良なジョーとの交流は感動的。二人の出会いは、映画『ザ・フューチャー』に結実している。

※女性セブン2015年10月15日号

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