栽培漁業センターの職員が乗った小さな船が海上に浮かぶいかだに近づくと、幅30cmほどの板の上を器用に渡って猫が駆け寄ってくる。
生まれたときからこのいかだの上で暮らしているドラミだ。
「猫の15才って、けっこうなおばあちゃんかもしれんけど、そうは見えんじゃろ?」
ちなみに彼女は、人間でいえば80才近い高齢猫。若さの秘訣は?
「やっぱりこの環境じゃね。季節を体で感じられるのが最高! 海上生活だとノミもつかんし、ええことだらけっちゃ」
ドラミは、今も一緒に海上警備をしているチー(17才・取材時は体調を崩して陸で療養中)と、数年前に他界した父猫ブーニャンの娘として、このいかだの上で誕生した。
若いころはカラスを追い払おうと足場をダッシュし、勢い余って海に落ちることもあったというが、
「今は、わたしらがおるだけで、カラスが寄ってこんけー」
と余裕の表情。ちなみに、万が一落ちても得意の“猫かき”でいかだに戻れるのでご安心を。
「台風が来たときは倉庫に避難するんじゃけど、揺れん地面は落ち着かんっちゃぁねー。わたしらは本当の意味での“海猫”じゃけぇ」
瀬戸内海の穏やかな潮風にヒゲを揺らし“海猫”ドラミは今日もフグたちを守っている。
【プロフィール】
名前:ドラミ ♀
年齢:15歳
種類:猫
勤務先:公益財団法人下松市 水産振興基金協会 下松市栽培漁業センター
職種:海上警備
主な仕事内容:海上に浮かぶ養殖用いかだの上で、カラスなどからフグを守る。
お給料:毎日、職員さんが船で運んできてくれるキャットフード。
好きなこと: 職員さんたちに会うこと。
嫌いなこと:抱っこされるのがイヤ。
ただし、自分からお膝に乗るのは好き!
現在の悩み:17才になるお母さんのチーが体調を崩しているので、早く元気になってほしい。
将来の夢:いつまでも母娘なかよく、いかだの上で暮らしたい。
※女性セブン2015年10月15日号