8月初旬に中国・天津で発生した大爆発事故について、習近平政権は厳しい報道管制を敷いており、現場の情報や発生原因などは一向に明らかになっていない。そんな状況ながら、爆発現場の中心部への潜入に成功したジャーナリストの相馬勝氏が、今回の事故について解説する。
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事故は8月12日の深夜、午後11時半(日本時間13日午前0時半)に発生。天津市中心部から車で1時間ほどの天津港に隣接する濱海経済区内の危険物倉庫が爆発した。後になって分かったのだが、倉庫には3000トンもの危険な化学物質が貯蔵されていた。
そのうち水や酸と反応すると引火性の猛毒ガスを発生するシアン化ナトリウム700トンが倉庫の外に野積みされており、それが消防隊の放水によって化学反応を起こし、2次、3次など次々と大きな爆発を誘発した。
これほどの被害を出す原因となった大量の危険物の貯蔵は天津市の条例違反で、この倉庫会社社長ら関係者12人と、同社に対して不正に危険品取扱許可を与えていた市政府幹部ら11人の計23人が身柄を拘束され取り調べを受けている。
事故現場はこの爆心地から半径2.5kmの円内まで拡大しており、その被害を受けた面積は約20平方キロメートルにも達する。東京ドームでいうと、1500個以上にもなり、銀座を擁する東京都中央区のほぼ2倍の広さとなる。
この大爆発で世界第4位の規模を誇る天津港の機能が完全に麻痺した。中国メディアによると、この影響で8月の中国の輸出額は前年同月比5.5%減で、特に天津港を主要な貿易拠点としている北京市の輸出は今年1月から8月までの総計で17.3%も減少した。周辺の工場なども操業をストップするなど、被害額は730億元(約1兆4600億円)にも達すると見られている。
※SAPIO2015年11月号