北京市政府は6月から職場など屋内での喫煙を全面的に禁止する世界的にも厳しい禁煙条例を施行したが、これに違反して喫煙をした人を見つけ出して当局に“密告”するボランティア制度を9月から導入し、現在約1万人の要員を年末までに10万人に増やす方針であることが分かった。2022年冬季五輪招致の成功に向け、喫煙大国の首都のイメージ改善を目指すという。
禁煙条例の正式名は「北京市喫煙管理条例」で、空港や駅など公共の場所やオフィスビル、飲食店など「屋根のある場所」での喫煙を禁止。屋外でも指定場所以外の喫煙は認めないというもの。
「中国史上最も厳しい」と称される北京市の新しい禁煙条例では、公共の場所はすべて禁煙となる。駅や空港などの公共交通機関や公的施設だけでなく、レストランやホテル、病院などでも禁煙となり、守られていない企業に対しては最高で1万元(約20万円)の罰金、個人に対しては最高で200元(約4000円)の罰金が科せられる。
中国は世界最大のたばこの生産国、消費国で、成人の3割近くにあたる約3億人が喫煙するが、このため毎年100万人超が喫煙関連の疾病で死亡し、受動喫煙者も7億人を超える。
2022年冬季五輪の北京市開催が先月決まったことも「禁煙徹底」の動機になっているとみられ、「タバコ大国」という汚名を返上するのに躍起となっている。
中国では胡錦濤政権下の2011年にも、同じような規則が施行され、飲食店での喫煙も禁じられたが、罰則規定がなく有名無実化。鎖が掛けられた空港の喫煙室も、いつの間にか再開していた。
今回は、この轍を踏まないために導入したのが密告制度だ。ボランティア要員は写真を撮るなどして通報し、関係当局が違反者対応を行う。現在の要員のうち、最年少は14歳、最高齢は81歳。要員は発見時に、喫煙をやめるよう注意するとしている。
これに加えて、北京市は職場の室内外で全面禁煙を徹底させる「模範職場」を募り、職場単位で禁煙を根付かせていくことも計画している。
中国で密告は大規模政治運動、文化大革命の際に盛んに行われ、現在も反腐敗運動で国民に不正幹部に関する通報を奨励するなど、共産党の統治手段の一つ。制度導入で条例に実効性を持たせる狙いがあるとみられる。
しかし、ネット上では「暗黒の文革時代を連想させるような密告制度を復活させるなど、習近平はまさに毛沢東の生まれ変わり。たかが、タバコを禁止するだけのために、そこまでやる必要はあるのか」との書き込みも見られる。