今や新年の国民的行事となった箱根駅伝。中でも近年、「最大の見どころ」といわれるのは、天下の険・箱根に挑む「山登りの5区」だ。驚異的なスピードでライバルたちをごぼう抜きする「山の神」が登場することでも知られる。だが、今年5月に箱根山の火山活動が高まって以降、箱根駅伝の開催を危ぶむ声が出ている。
実際に箱根山からそれほど離れていない5区および6区を走るランナーたちに危険はないのか。コースは大涌谷の立ち入り禁止エリアから直線距離で約2 kmの場所を通る。警戒区域からは外れているが、地震・火山研究の第一人者である武蔵野学院大の島村英紀・特任教授は、「二次泥流(土石流)が発生した場合は危険にさらされる可能性もある」と指摘する。
また箱根山では6月以降、火山灰の噴出が頻繁に確認されている。防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏はこう語る。
「“灰”という文字なのでフワフワ柔らかいようなイメージがあるかもしれませんが、火山灰には火山ガラスという微粒子が多く含まれることがある。
目に入れば眼球を傷つけ、肺に入れば呼吸障害を引き起こしかねない。選手生命に影響する危険もある。今後大量の降灰が確認されるようなことがあれば、駅伝の中止も考えないといけないと思います」
また火山灰が降らなくとも、粉塵がコース上に落ちてくれば滑りやすくなり、選手が転倒する危険性も高まる。
前出の島村氏は、大涌谷周辺で発生している火山性ガスについて次のように説明する。
「最近では、大涌谷以外の山林からも火山ガスが出て草木を枯らしている。そういったガスが人体に影響を及ぼす可能性は否定できない。ガスは地震ほど観測機器が充実していません。A地点で観測して“大丈夫”でもその他の地域が安全とは言いきれないのです」
※週刊ポスト2015年10月16・23日号