胆管がんで亡くなった川島なお美さん(享年54)は、昨年1月の手術前夜、夫の鎧塚俊彦氏(49)に「一緒のお墓に入りたいから、できれば再婚しないでね」という遺書を綴ったとテレビ番組で明かしていた。手術が成功したためその遺書は破棄されたが、川島さんの急逝後にそのことが報じられると、夫への深い愛情を感じさせる逸話として国民の涙を誘った。
しかし、もし自分が妻から同じ遺言を受け取ったとしたら、あなたはどう思うだろうか。地方銀行に勤務するA氏(53)は、3年前に妻を大腸がんで亡くした。1年間の闘病生活の末、A氏と高校生になる2人の子供を残して妻は逝った。
「妻は死に際に『パパ、私が死んでも楽しく過ごしてね。子供のこともお願いね』と言って旅立っていきました。その時点で、再婚する未来を考えなかったといったらウソになりますね。もちろん妻のことは心から愛していましたが、この先子供たちが独立して、ずっと独り身というのは寂しい気がして……。
もし妻に『再婚しないで』と言われていたら、やましい想像を見透かされたみたいでゾッとしただろうし、のちのち苦しんだかもしれません」(A氏)
最近になって、新しいパートナーを探すべく婚活を始めたA氏は、こうも語る。
「妻の遺言が背中を押してくれました」
中高年の再婚・結婚相談所「M’sブライダルジャパン」の宮崎央至代表によれば、妻と死別した男性が悲しみを乗り越え、次のステップを踏み出すまでに要する時間は意外と長くないという。
「非常に落ち込んでいた方でも、2~3年経てば新しいお相手を探し始めるようです。なかには一周忌を待たずに入会される方もいます。仲良くされている夫婦を見たり、同窓会に出席した時などに“自分だけ独り身というのは寂しいかな”と感じられるようですね。毎年、夫婦で海外旅行に行っていた70代の男性が、“同じように一緒に旅行に行ける女性を探してほしい”と入会されるケースもありました」
結婚相談所サンマリエに取材しても、やはり「2~3年」という答えが返ってきた。
「その間に自分で家事などもできるようになり、次第に生活が落ち着いてくる。その段階になると、前を向いて今後のことを考え始められるようになるのでしょう」(担当者)
結婚相談所の男性会員の中で死別経験がある人は約1割だという。前出・宮崎代表によれば、結婚・再婚活動をする中高年男性のなかでも、妻と死別した人の再婚率は高いという。
「死別の方は積極的にお見合いもされますし、1年か1年半といった早い期間でまとまるケースが多い。やはり急に欠けてしまった部分をなんとか埋め合わせたいという気持ちが、未婚男性に比べて大きいのかもしれません」
※週刊ポスト2015年10月16・23日号