今や新年の国民的行事となった箱根駅伝。中でも近年、「最大の見どころ」といわれるのは、天下の険・箱根に挑む「山登りの5区」だ。柏原竜二(東洋大、現・富士通)をはじめ数々の「山の神」を生み出してきた人気の区である。だが、今年5月に箱根山の火山活動が高まって以降、箱根駅伝の開催を危ぶむ声も出ている。
この区は、実際に箱根駅伝のコースは大涌谷の立ち入り禁止エリアから直線距離で約2kmの場所を通る。警戒区域からは外れているが、二次泥流(土石流)が発生した場合の危険性も指摘されている。
警戒レベル3(入山規制)だった8月には、箱根町仙石原の「大箱根カントリークラブ」で女子ゴルフ『CAT LADIES』トーナメントが開催された。会場は大涌谷火口から3kmの距離にある。
「例年、箱根に宿泊していた選手や大会関係者の多くが約10km離れた御殿場に宿泊しました。開催に踏み切ったのは、箱根の観光業に関わる人々の強い希望だったと聞きます。“中止にすれば箱根駅伝にも影響しかねない”という懸念もあったようです」(スポーツ紙デスク)
箱根駅伝を中継する日本テレビにとっても開催の有無は重大問題になる。
「今年の箱根駅伝の平均視聴率は往路、復路ともに30%弱でした。往復12時間にわたってこれほどの視聴率を取れるコンテンツなんてありません。
また放送開始以来サッポロビールが冠スポンサーとして多額のスポンサー料を払ってくれるドル箱です。中止にだけは絶対したくないはずです」(テレビ局関係者)
だが、地震・火山研究の第一人者である武蔵野学院大の島村英紀・特任教授は警鐘を鳴らす。
「箱根は基本的に国道1号線の一本道です。毎年駅伝のときには、その沿道に20万~30万人のファンが詰めかけます。そんな中、もし小規模でも噴火が起これば、1号線は大渋滞となり、集まった人たちは逃げ場を失い、大パニックを起こす可能性がある」
安全と損得勘定をどう秤にかけるのか、いよいよ重大な判断を迫られる。
※週刊ポスト2015年10月16・23日号