プロ野球のペナントレース終盤からFA市場の動向に注目が集まるが、今年、面白いのは捕手のFA候補たちの動きだ。
小林誠司の育成に手間取っている巨人にとって、正捕手の補充は緊急課題。昨年も楽天の嶋基宏の獲得を狙ったが、本人の「もう一度楽天で優勝したい」との思いに阻まれ、仕方なくヤクルトから相川亮二を獲った。が、すぐに故障して働けなかった(わずか40試合出場)という事情がある。
嶋は選手会長として、先発オーダーにまで口を出す三木谷浩史オーナーに一番怒っているという。今季は試合中、その三木谷オーナーにいわれるがままだった大久保博元監督とのハイタッチを拒む事件まで起こした。もはや楽天には未練はないとみられている。
「嶋自身は、地元(岐阜)の関係で中日入りを希望しているといわれています。巨人のライバルは中日になるでしょう。昨年は西武の炭谷銀仁朗の中日入りが囁かれたが、それがなくなったので、嶋としては悲願の達成を狙っているはず」(中日担当記者)
その炭谷は今季、フルスイングで売り出し中の森友哉との正捕手争いを制し、開幕からレギュラーの座を守った。だが依然FA権は維持している。嶋よりも3歳若く、まだ20代というのもセールスポイントだ。
同じく若手捕手で注目されているのが、日本ハムの大野奨太。2008年ドラフト1位で入団するも、鶴岡慎也(34=現SB)との併用が続いたため、100試合以上出たシーズンは2度しかない。だがそのためランクCと“お買い得”で、人的・金銭的補償なしで獲得できる。地味だが、隠れた有力候補として注目されている。
捕手の世代交代に悩むチームは多い。巨人はもちろん、谷繁監督が引退した中日、貧打・ベテラン捕手しかいないSBなど。彼らは今季、FA戦線の台風の目になりそうだ。
※週刊ポスト2015年10月16・23日号