胆管がんで亡くなった川島なお美さん(享年54)は、昨年1月の手術前夜、夫の鎧塚俊彦氏(49)に「一緒のお墓に入りたいから、できれば再婚しないでね」という遺書を綴ったとテレビ番組で明かしていた。受け止め方はさまざまだろうが、妻と死別した男性が悲しみを乗り越え、次のステップを踏み出すまでに要する時間は意外と長くない。2~3年で再婚を考えるケースも少なくないという。
気になるのは、再婚相手となる女性が“死別”をどう受け止めるかだ。場合によっては、離婚以上に“元妻への未練”を感じてしまっても不思議はない。結婚相談所サンマリエの担当者がいう。
「お見合いをされる際に、女性のほうがそのことを気にされているような場合は、男性の方に“女性に安心していただけるように、ご自身でお話しされてみてはいかがですか”とアドバイスさせていただいています」
だが、いざ再婚した後も、死別した元妻の“存在”が見えない壁になるケースも少なくないようだ。夫婦・家族問題評論家の池内ひろ美氏が話す。
「“前の奥さんの写真を全部片づけてほしい”“仏壇があるのは嫌”と言い出す女性もいます。そうなると、せっかく再婚しても、うまくいかなくなってしまいます」
一方、妻との死別後、再婚できない男性には次のような特徴があるという。熟年パーティを主催する三幸倶楽部代表・越川玄氏の話。
「亡くなった奥さんが美人であればあるほど、再婚できない確率は高くなります。後妻を選ぶ際のハードルが高くなり、なかなか再婚に踏み切れない。なかには亡くなった美人妻の写真を常に持ち歩いている人もいますが、それでは再婚相手を見つけるのは難しいですね。お墓参りを毎日欠かさないという人も、元妻への未練からか交際相手とうまくいかなくなるようです」
老後を亡き妻との思い出に浸って独りで生きていく――そう決意しても、独身のまま高齢を迎えれば「下流老人」に陥る可能性が高くなる。『下流老人』(朝日新書)著者でNPO法人ほっとプラス代表理事の藤田孝典氏が語る。
「下流老人の共通点は【1】収入が少ない、【2】十分な貯蓄がない、【3】頼れる人間がいない、の3点です。妻を亡くした男性は受け取れる年金が一人分になり、しかも妻の闘病で医療費がかさんで老後資金が目減りしている可能性が高い。人間関係でも、妻が保っていた近所のコミュニティとの接点が失われ、孤立してしまう人が多いのです。熟年離婚などと同様、死別も下流に落ち込むきっかけになる」
再婚しても、独身を貫いても、妻を亡くしたことで降りかかる困難は避けられない。だからこそ、今そばにいる妻を今まで以上に愛し、いたわる──それが夫の務めなのだろう。
※週刊ポスト2015年10月16・23日号