「日本全国の寺院のうち、35.6%が消滅の可能性がある」(鵜飼秀徳著、日経BP社刊『寺院消滅』より)。今、日本全国の寺が困窮にあえいでいる。4人の現役僧侶が葬式にまつわるお金の話を語り合った。
今回、自らの寺院を持つ住職・副住職たちが一堂に会した。甲信越地方の浄土宗の副住職A(43)、関西地方・浄土真宗の住職B(63)、関東地方・曹洞宗の住職C(50)、そして北陸地方の臨済宗の住職D(35)が、匿名を条件に「葬式の費用」について語る。
浄土宗A:葬儀は定期的にあるものではないので、副収入的に考えていますね。それに葬儀の際の「お布施」は、一応相場はあるものの、こちらで額を決めることができない。そもそもお布施とはお寺に対する寄付のこと。こちらで具体的な額を提示してしまうと商取引になり、課税される可能性がある。
一応お布施の相場は東京が高額で40万~50万円、大阪や名古屋が30万~40万円、京都が20万~30万円で、地方だと10万円前後といわれていますが、原則「寄付する側の言い値」でやらなきゃいけない。相場より低いから葬儀を断わるということはできません。
浄土真宗B:でも今は「値段はいくらですか」とストレートに聞かれる時代になりましたね。我々は「お気持ちで」というしかない。それでは困るといわれた時には、「本意ではないが相場ではこのくらいです」とお伝えするようにしています。
そうした相場は親や親戚の年配者から引き継がれ、暗黙の了解となっていたんですが……。最近では袋に「お経料」と書いて持ってくる人がいるくらい(苦笑)。これは「料金」ではない、ということで「『お布施』と書いてください」とお願いしています。
浄土宗A:その点、葬祭業者が仲介している場合には、こうしたことを代わって伝えてくれるから安心ですよね。葬祭業者に手数料を取られるから難しいところではありますが。
曹洞宗C:自分だけでは葬儀を行なえない寺が増えてきているから、最近の葬祭業者は強気ですよね。仲介手数料名目の「中抜き」が2~3割、多いところで5割ぐらいでしょうか。
臨済宗D:最近は葬儀は必要ない、墓も要らないという「ゼロ円葬」の時代ですから、業者も大変なんでしょう。でも我々はいつの時代でも「お気持ちで」と返すしかない。収入は減るばかりです。
※週刊ポスト2015年10月16・23日号