9月11日、安倍晋三・首相は経済財政諮問会議で、「携帯料金等の家計負担の軽減は大きな課題だ」と述べ、携帯電話各社に値下げを求めた。
安倍首相の言う通り、携帯料金は年々家計を圧迫している。総務省の家計調査によると、2人以上世帯の通信費は2014年が年間18万8000円。家計支出に占める割合は10年前と比べて約2割も上昇している。
海外と比べても日本の携帯料金は割高で、東京の通信料はロンドンやパリ、ソウルよりも高い(総務省2014年度調査)。
その理由として、スマートフォンの普及で動画などの視聴機会が増えたため、データ通信料が料金を押し上げた──とメディアでは報じられているが、本当の原因は別のところにある。
日本の携帯料金が高いのは、“電波利権”を生むテレビ局優遇策によって、携帯ユーザーが割を わされている構図があるからだ。そこを見逃してはならない。
国民の公共財である電波は国(総務省)が各事業者に割り当て、テレビや携帯各社はその対価として電波利用料を毎年払っている。が、その額には大きな開きがある。
最新の電波利用料(2013年度)の歳入額は約806億円。そのうち、NTTドコモやau(KDDI)、ソフトバンクモバイル、ウィルコムなどの携帯・PHS等の通信事業者8社が700億円超と、全体の87%を負担している。ちなみにドコモは1社で約244億円も負担している。
一方のテレビ局はNHKも含めた全国128局で約56億6200万円。わずか全体の7%に過ぎない(※残り約6%は無線局免許を持つアマチュア無線家など)。同年のテレビ局全体の売り上げが約2兆8490億円だから、電波の仕入れ値は0.2%という“タダ同然”の金額なのだ。
これは電波利用料が、各社が保有する無線・中継局の数によって決まるためで、携帯電話の場合、端末1台で1つの無線局とカウントされるからだ。携帯各社は端末1台ごとに年間200円を課金しているのだが、それは我々ユーザーが負担している。
※週刊ポスト2015年10月16・23日号