フジテレビ系『全力!脱力タイムズ』でもおなじみの、東京未来大学・こども心理学部長の出口保行さんが同僚に困っているという女性の相談にお答えします。
【相談】
同僚の美奈子は自分にとって有利な先輩を見つけると、すぐにその人になびいていきます。それまで慕っていた人のことなどなかったかのような変わり身の早さに、こっちが恥ずかしくなるくらい。そんなアンテナより仕事のアンテナ張ってくれるかな! (神奈川・佳苗・32才)
【回答】
同僚の美奈子さんはつねに社内の形勢を見て、自分に有利な人につくという考え方であること。そして、その手のひら返し具合があまりにもあからさまで、佳苗さんやほかの同僚の目に余るのですね。
その場の状況で、有利なほうに流れたり、他人の意向を気にし、それに左右される人を、世間では日和見主義とか風見鶏などと呼び、あまりいい印象がないようです。
ずいぶん前ですが、総理大臣まで務めた日本のある大物政治家が、党内でのポジションを情勢によってクルクル変え、その様子を風見鶏にたとえられたのは有名な話です。
しかし、美奈子さんのようなタイプは、どの会社にも多かれ少なかれいるのではないでしょうか。
このタイプは長いものに巻かれる人、調子のいい人など、ネガティブなイメージがありますが、この立ち居振る舞いは生きていく上で必要なことでもあるのです。
自分の持っている能力ではなく、人の能力を借りて何とかしようとするわけですが、それには状況判断能力や先を見とおす能力が高くなければできません。
となれば、社会の中ではこの能力は必要ですし、その能力がある人は、成り上がっていけるのです。もちろん、それがあまりにもあからさまだと、いやらしく見えて、周りの人から嫌われますから、程度問題というのはあるでしょうが…。
【対策】
どんなに仲よくしている相手でも、不要になるとバッサリ切ってくるのがこのタイプ。その変わり身といったら、あっぱれといいたくなるくらい、後をひきません。
つきあうなら、「いつ裏切られるかわからない」と肝に銘じ、距離をとりながらかかわることです。短期間に利益を得ようとする場合、このタイプの人はうまくことが運ぶかもしれませんが、コロコロと態度が変わるため、最終的に信用を失う可能性も高い。
深くかかわると、あなたまで周りから信用を失いかねません。距離をとってつきあうことは、裏切られた時の屈辱を味わわないための自衛策でもあるのです。とはいっても、苦々しく思うことばかりではないのです。
人の意見に左右されない堅く強い意志を持っている“志操堅固”がいいとされる、日本人の文化があるから、日和見主義や風見鶏のようなタイプはよしとされにくいのですが、下手に意地や義理をとおして失敗する人が多いことも事実です。
つまり、美奈子さんのようなタイプで、出世はするけど、周りから信用されないケースもあれば、その真逆のタイプだからこそ失敗し、周りの人が去っていくケースもある。
どちらも極端な例だから、いい悪いは一概にはいえませんが、美奈子さんほどではないにしろ、佳苗さん自身も、状況判断能力や、時間的な展望などを俯瞰する能力を身につけることは、社会で生きていくためには必要だということを理解しておきましょう。
※女性セブン2015年10月22・29日号