チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世(80)が米ミネソタ州の病院メイヨー・クリニックに検査入院し、「数週間の休息が必要」と診断されたが、ダライ・ラマは「極度の疲労状態」にあることがチベット関係者への取材で明らかになった。
同筋によると、中国では習近平指導部が発足後、チベット自治区や新疆ウイグル自治区などで厳しい少数民族政策を敷いており、ダライ・ラマは国際社会にチベットの窮状を訴えるために、80歳を過ぎたいまも世界各国を訪問するなど、休む暇もないほどで、ここ数年来にわたる疲労が蓄積していた。
ダライ・ラマは10月17日からコロラド、マサチューセッツ、ペンシルベニア、ユタの各州で講演などを予定していたが、過酷なスケジュールだけに「ドクターストップ」が出たという。
その忙しさについて同筋は、「ダライ・ラマはインドでは起きてすぐに瞑想などをして、午前5時に軽食。その後、6時ごろから9時ごろまで再び瞑想などの仏道修行を行う。昼食後は国内外の賓客らを会見する」という。
このほか、インド国内を行脚し、仏教行事や講演で飛び回っているほか、海外に滞在している場合も午前4時起床の生活は変わらない。それ以上に多数の人々と会うほか、講演を一日に2回も行なったり、記者会見を開くなどで「それこそ分刻みの忙しさ」だと同筋は語る。
さらに、ダライ・ラマは60代のころから膝が悪くなっており、疲労がたまってくると、歩くのもつらい状態が続くという。移動の飛行機などでもよく寝ることができず、疲労がたまるなどの悪循環という生活を20年も続けてきた。
「いまダライ・ラマは弾圧されている中国内のチベット人を救おうという思いが非常に強く、その気力だけで体を支えているといってもよい」(同筋)
特に、習近平指導部はチベット仏教の僧侶に共産党思想の教育を課したり、少しでも共産党を批判するものはすぐに監獄に送るなど、厳しい宗教弾圧政策を敷いていることや、ダライ・ラマに万一のことがあれば、中国当局がその後継者を勝手に指名する構えを見せており、「今後のチベットの命運はダライ・ラマの寿命にかかっていると言っても過言ではない」と北京の共産党筋は指摘する。