セ・リーグ首位独走かと思われたが、シーズン終盤に失速。シーズン負け越しながらもなんとか3位に滑り込んでクライマックスシリーズ(CS)に出場した阪神タイガース。就任4年で一度も優勝をできなかった和田豊監督は今季限りでの退任が伝えられ、後任にはOBの金本知憲氏の名前が挙がっている。ここ数年、シーズン後半になると、必ず和田監督の去就が取り沙汰され、ファンやマスコミの間ではその手腕に否定的な意見も数多く出ていた。野球担当記者が語る。
「ハッキリ言えば、キャラクターでかなり損をしていたと思います。地味なイメージのため、新聞の見出しになりにくいし、岡田彰布元監督の『そら、そうよ』というようなファンの気持ちを掴むコメント力があるわけではない。阪神の監督には、勝利だけではなく、話題性を含めたエンターテインメント性が求められます。和田監督はエンタメ性に欠けていたので、マスコミやファンは物足りなく感じたのでしょう」
和田監督は就任1年目こそBクラスに終わったものの、残りの3年は優勝争いを演じてCS出場を果たし、昨年は日本シリーズにも駒を進めている。
1950年の2リーグ分裂以降、阪神で3年連続Aクラス入りを果たした監督は、松木謙治郎氏、藤本定義氏、岡田彰布氏に次いで4人目となる(シーズン途中就任の監督を除く)。1985年に日本一になった時の監督、吉田義男氏でも達成できなかった記録だ。
「のべ26人の監督中の4人ですから、阪神の球団史に残る名将ですよ。選手起用にしても、ベテラン重用と批判されることもありましたが、我慢して使ったおかげで福留孝介は復調。かといって、同じくメジャー帰りの西岡剛にはレギュラーを確約しないなど柔軟な姿勢を見せた。今成亮太、上本博紀、大和といった自分の現役時代のスタイルと似た小技の効く選手を効果的に起用し育成した点も評価されます。投手陣を見ても、藤浪晋太郎はルーキーから3年連続2ケタ勝利を達成、ベテランの安藤優也を中継ぎとして復活させるなど、その手腕はもっと評価されてもよいでしょう」
1990年代の低迷期の阪神と戦力が違うといえば、それまでだが、現有戦力をうまく活用し、3年連続Aクラスという結果を残した和田監督の手腕はもっと評価されてもよいのかもしれない。
「今年はゴメス、マートンの助っ人コンビがともに2割7分台と打てなかった。それでも、上手くやり繰りしてAクラスに食い込んだ。それに、終盤になると毎年周囲が去就を騒ぐ中で、きちんと結果を残している点も認められるべき。阪神の監督には、采配以外のプラスアルファが求められますが、他球団の監督なら、もっと称賛されたでしょう。いずれ、他球団から監督のオファーがあってもおかしくありません」(同前)
はたして、縦縞以外のユニフォームに袖を通す日は来るか。