たっぷりあぶらがのったさんま。スーパーではこの時期、1匹300円前後で安く買えるし、毎日のように食卓に上がっても、ちっとも飽きない! という人も多いのでは? そんなさんまを、秋の味覚として当たり前のように食べられなくなる日がやってくるかもしれない。
これまで日本は、さんまについては他国の追随を許さない水揚げ量を誇ってきた。ところが7月に解禁された今年のさんま漁は様子が違った。初日の水揚げ量は過去最少を記録し、この10年で最も高値となった。7月の1か月間で比較しても、2009年に1800トン近くあった水揚げ量が、今年はわずか4トン。
そんな日本を尻目に、ぐんぐん水揚げ量を伸ばしているのが台湾と中国なのだ。すでに2014年の段階で、日本は台湾に1位の座を渡している。また、それまで歯牙にもかけず、年間1万トンにも満たなかった中国の水揚げ量が、2012年頃から急増。わずか2年で7万トンとなっている。
日本の漁獲量の激減について、東京海洋大学海洋科学部准教授の濱田武士さんはこう説明する。
「そもそも、資源量は大きく変動します。海流などの影響により、回遊ルートも変わるので、近年は、日本沿岸ではさんまがあまり獲れない状況にあります」
漁業を行ったり、天然資源を掘るに当たっては、国際法で、自国の主権が及ぶ「領海」やその範囲外の「公海」など、水域の範囲が定められている。日本のさんま漁は主に日本の漁業水域で行われているが、台湾や中国は自国の外側の公海でも漁を行っており、それが両国の急台頭の理由となっているのだという。
「さんまが日本に近寄らず、漁業水域外で回遊していると、結果、台湾、中国の船ではたくさん獲れて、日本が獲れないという状況になります。実際には台湾、中国がたくさん獲ったからといって、さんまがすぐに激減するということはありません。ただ、日本は獲る量を決めていますが、台湾、中国は獲れる分だけ獲る。獲りすぎると次の年に影響しますから、この状態が続けば、日本に入ってくるはずの資源が入らなくなる恐れはあるでしょう」(濱田さん)
なぜさんまが突然中国で人気者になってしまったのか?
「それこそ爆買いのため日本にやってきた中国人が、日本でさんまを食べて、そのおいしさに気づいたのではないでしょうか? 中国では冷凍さんまが市場に出回っていますが、日本では生にこだわって出荷していますから、おいしさには歴然の差があるんです。それが昨今の爆漁につながっているとの見方もできますね」(ある流通ジャーナリスト)
そんなさんまの噂が、中国からお隣の台湾へ広まったということか。いずれにしても、このピンチだけはどうにか切り抜けたい。
※女性セブン2015年10月22・29日号