中国の習近平国家主席が9月下旬に訪米した際、習氏が首都ワシントンに滞在する約30時間を狙って、習氏に「直訴」しようとする中国人陳情者らが習氏らの自動車の車列の前に飛び出し、車列が衝突しそうになるなど混乱する場面がみられた。陳情者らは「射殺されるのも覚悟で」、習氏に窮状を訴えようとしていたという。米政府系メディア、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の中国語サイトなどが伝えた。
中国では習氏の地方視察の際にも陳情者が大声で「習おじさん、私を助けて」と訴える場面が見られることもある。そして、9月3日に北京で行われた軍事パレードでも厳重な警戒を潜り抜けて、パレード会場の長安街(通り)に地方からの陳情者がまぎれこむなど、中国全体で陳情者は600万人以上に及び、命がけの危険な陳情風景が日常化している。
米ワシントンでの陳情は9月25日の午後、米中首脳会談が終了し宿舎に戻ろうとしていた際に起こった。中国からの複数の陳情者が習主席らの車列を遮り、「習近平、陳情者に会え」と叫んだのだ。
周辺は騒然となり、道路上の警備の警官らが駆け付け、陳情者らを現場から引き離し、車列は間もなく立ち去った。
陳情者ら強制立ち退きをめぐる問題などで、中国当局に陳情を繰り返していたという。だが、中国国内ではまともに訴えを聞いてもらえないため、北京や上海から習主席に直訴するために、米国を訪れたという。
彼らは「ほかに打つ手がない。射殺されても構わない」との覚悟を仲間に語っていたという。
北京の外交筋は「習近平政権は陳情者への弾圧を強化しており、中国内での陳情が聞き届けられるケースはほとんどないため、最近は指導者の外遊を狙って警備が手薄な外国に行って直訴するケースが増えているようだ」と指摘している。