写真共有アプリ「インスタグラム」で30万人近くのフォロワーを持つ人気者の猫「こむぎ」。生まれつき心臓に重大疾患を抱え、余命宣告をされながらも日々を一生懸命に生きている。
著書『こむぎといつまでも~余命宣告を乗り越えた奇跡の猫ものがたり』も話題の飼い主・tomoさんは、こむぎと住むためにそれまでより少し広い家に引っ越した。少しでもこむぎが過ごしやすいよう、“猫優先、人間のことは2番目”で考えたという。トイレのしつけや、こむぎの噛み癖など、問題も起こったが、工夫をして、根気強く克服していった。
そうして楽しく暮らしていたこむぎに異変が起きたのは、2012年春のことだ。
仕事が終わって帰ってきたtomoさんのもとにかけよってきたこむぎは、突然ばたん!と倒れ、手足を苦しそうにバタバタと動かし、これまでに聞いたことのないようなうめき声をあげた。その時は、30分ほどでおさまった発作だが、3日おき、2日おき、1日おき…毎日続くようになったため、tomoさんはこむぎを全国でも著名な心臓外科医のもとへと連れて行った。
「発作を起こすこむぎの姿はまるで、“苦しいよ!”“助けて”“助けてよ!”と言っているようで、私はただただ泣きながら背中をさすってあげることしかできませんでした」(tomoさん)
こむぎの舌は紫色になり、チアノーゼ症状が起きていた。診断結果は、あまりにもつらすぎるものだった。
「心臓に穴があいていて余命は半年ほど、と言われました。治すためには手術をするしかないけれど、こむぎは症状が進行していて合併症を起こしているから、手術はできないと言われたのです」(tomoさん)
もっと早く病院にきていたら、もっと早く検査をしていたら、こむぎは発作に苦しまずに、普通の猫と同じように生きられたかもしれない、この子はなにも悪いことをしていないのに―そう涙を流すtomoさんだったが、手術は極めて難しく、もしできたとしても成功率は低いという。こむぎは、対処法として薬で症状をやわらげることしかできなかった。