【話題の著者に訊きました】岩井志麻子著/『「魔性の女」に美女はいない』/小学館新書/821円
18才年下の韓国人男性と2度目の結婚をしたものの別居し、最初の夫との間にもうけた2人の子供も独立した岩井志麻子さん。結婚生活の表も裏も知り尽くした彼女の最新作には、実際にあった男と女の愛憎劇がたっぷり16本詰まっている。
不倫相手の男性の家庭を崩壊させようと、ベッドの中での声を携帯電話で妻に聞かせる女性、働かないで暴力をふるう夫なのに幸せを感じる国際結婚妻、男たちを手玉にとった木嶋佳苗被告と上田美由紀被告、そして、金持ちの独身と偽って三十路の風俗嬢をだましていた、岩井さんの現在の夫も登場する。
「みんな、どう考えても普通じゃないですよね。でも、この人たちは自分をいい妻、いい夫だと信じているし、自分たちの結婚生活が王道だと思っている。私はそれに感動すら覚えます。普通というのは、それぞれ自分が基準で、人から見たら違うんですね」
と、岩井さんは言う。
みんなが普通と思っている恋愛結婚も、岩井さんが育った岡山では祖父の時代まで「野合」と呼ばれ、ふしだらと思われていたそうだ。当時はセックスするには結婚しかなかった。男性は家を継ぐため、女性はよりよい生活のためにするのがいい結婚だったのだ。
今では自由に恋愛できるが、ひとたび入籍すると、いろいろ不都合なことも起きる。
「籍が入るとドラマが生まれる。入れる、入れないで大違い。籍の使い方にもいろいろあるんですよ」
この本には、不倫をしている夫が相手と再婚できないように、憎しみだけで離婚に応じない美人妻が出てくる。また、ある芸人は、セクシーな女性タレントと一夜を過ごし、妊娠したと結婚を迫られた。絶対にイヤだったので、そのときつきあっていた彼女と急いで籍を入れて逃げ切ったという。
岩井さん自身も、籍を入れたことで苦労を味わってきた。最初の結婚に破れ、2番目の夫ジョンウォンさんが1年以上失踪してソウルの警察に相談に行った。そして新しい恋人に出会い、夫と再会したはいいが離婚を拒否され、元夫に相談し…波瀾万丈の結婚生活が続いている。それでも表情は底抜けに明るい。
「結婚したほうが絶対に楽しい! これだけ失敗してきたけど、やっぱり面白いんですよ。当たり前ですけど、人って自分の思い通りにならんわーとか、自分がいちばん正しいのではなく間違っていたのかもしれん、と思えるようになりましたしね。今の夫と離婚が成立したら? うーん、私のことですから、また誰かと籍を入れる気がします」
(取材・文/仲宇佐ゆり)
※女性セブン2015年10月22・25日号