約半世紀の時を経て、再び球界を「黒い霧」が覆い始めている。巨人・福田聡志投手の野球賭博関与問題。現役のプロ野球選手が野球賭博に手を染め、しかも自軍の試合を賭けの対象にしていたという事実は、社会に大きな衝撃を与えた。これは福田個人の愚行に過ぎないのか。それとも氷山の一角であり、もっと深い闇が潜んでいるのか。
巨人軍の初代オーナー・正力松太郎氏の遺訓にはこうある。「巨人軍は常に紳士たれ」──。正力氏はいま、草葉の陰で泣いていることだろう。巨人の調査に対し、福田は「軽い気持ちで誘いに乗った」と語っているという。
事件は税理士法人勤務という男性A氏が、川崎市にあるジャイアンツ球場を訪れ、福田の借金を取り立てに来たことで発覚した。A氏は同じ巨人の投手・笠原将生の友人の知人。巨人の発表によれば、福田は昨年、笠原を通じてA氏を紹介され、野球賭博に誘われた。高校野球、巨人戦を含むプロ野球、そしてメジャーリーグの試合を対象に賭けを行なった。100万円以上負けたところで賭けを止めようと連絡を絶ったが、そのことでA氏の取り立てが始まったという。
野球賭博は今も昔も暴力団の資金源、いわゆる「シノギ」の一つだ。日本野球機構(NPB)の熊崎勝彦コミッショナーは5日の時点では、「(福田と)反社会的勢力との関わりは報告されていない」と発表した。
球界と野球賭博の関係で思い出されるのは、1969年から1971年にかけて騒動となった「黒い霧事件」だ。現役選手が野球賭博にかかる八百長行為に関与したことが発覚。結果的に約20人もの選手が処分を受け、うち6人が球界を永久追放となった。
巨人側は「福田には八百長行為は確認されていない」としているが、賭博行為などを禁止する野球協約第180条違反の可能性が濃厚。福田をコミッショナーに告発し、判断を委ねている。巨人重鎮OBが嘆く。
「八百長をしていないから、単なる張り客だからどうこうということではない。選手が野球賭博に関与しただけで重大な問題だ」
※週刊ポスト2015年10月30日号