元女子プロレスラーでタレントの北斗晶(48才)が乳がんで手術し、その後、リンパ節への転移と「5年生存率は50%」と宣告されたことを明かした。
手術をする場合、乳房を全て摘出する「全摘」手術か、患部のみを切除する「温存」手術があるが、乳がんの種類や進行度などによってその方法は変わってくる。どの治療法を選択するか医師と相談することになる。乳房全摘と聞くと不安になるが、「近年では再び全摘を選択することも増えてきた」とピンクリボンブレスケアクリニック表参道の島田菜穂子院長は言う。
「これまでの全摘では乳頭も乳房も切除するので、乳房がなくなって胸が平たくなりました。その場合も数年後の再建手術は可能ですが、やはり一度乳房がなくなるのはとてもつらいですよね。なので、残せる部分はなるべく残し、乳房を温存しようという考えが主流でした」(島田院長)
しかし、昨年1月から全摘手術と同時に乳房を再建する手術(同時再建)が保険適用になり、状況が変わりつつある。
「同時再建では、乳房の皮膚と乳頭は残し、胸の中身をそっくりバッグに入れ替えるイメージです。乳房を取り、そのまま続けて乳房を再建するので、麻酔から目覚めたときに自分の胸のふくらみがあり精神的ダメージも少なく、全摘と同時に再建する人が徐々に増えています。ただ、リンパ節に転移の可能性がある場合など、この手術ができないこともあります。北斗さんの場合は腫瘍が乳頭下にあってリンパ節転移もあったので同時再建は難しかったのでしょう」(島田院長)
もちろん、後から再建することもでき、その技術は年々進化してきている。医学博士で日本乳癌学会入選専門医の南雲吉則さんが言う。
「再建方法として、昔は自家移植といって自分の背中やお腹の筋肉と脂肪組織を乳房に移植する方法が一般的でした。しかし、近年ではインプラントを使っての再建が主流になっています。そのほうが簡単にきれいに再建できる。自分のがんがどんな種類でどのステージにあるかで状況は変わりますが、温存か全摘出か選べる場合、その生存率はほとんど変わりません。温存して放射線治療を続けたことで乳房が変形してしまうこともあります。全摘出して再建するのは有効な選択肢です」(南雲さん)
治療法で悩んだ末に、部分切除を選択したのは、タレントの麻木久仁子(52才)だ。
「40才の時から人間ドックを受けていて、乳がんが見つかったのは2012年、49才の時でした。胸が小さいから乳がんなんて無縁だと思っていて、むしろ子宮がんのほうを心配していたんです。でも、2012年に受けたマンモグラフィーで影が見つかって、細胞診をしたらがんでした。先生は、最悪のケースを想定されているので、“できるだけ温存はするけど、乳頭は残せないかもしれない”と言われました」(麻木)
“乳頭を残すことで再発のリスクが高まる”などという情報も耳にしていた麻木は、医師からそう説明を受け、「バサッといってください」と威勢よく答えた。
「でも、そのときは妙にテンションが上がっていてそう言ってしまったけれど、後になって“せっかくなら残ったほうがいいよね”と思ったり、また“いやいや乳首のひとつふたつ残すことで命を失ったらどうするんだ”と思ったり、強気になったり、弱気になったりしました。結果的には部分切除で、乳頭は残りました。その術式を選んだのは、先生が決めてくれたことです。患者の心の揺らぎに惑わされず的確な判断をしてくれた先生を信頼しました。周囲の人はその決断に寄り添ってほしいな、と思いますね」(麻木)
※女性セブン2015年10月22・29日号