高齢者の間で、孫の世話を押しつけられ、疲れ切ってしまう「孫疲れ」が密かに蔓延している。孫の面倒をみている高齢者のなかには、「周りは『孫がかわいい』という人ばかりだけど、自分はそこまででもない」という人も。
「おおっぴらにはいえないが、俺は孫といるのがそれほど好きじゃない。かわいかったのは、よちよち歩きのころまでで、最近は遊びに来ても家中を走り回り、ものを散らかし、やりたい放題。退職金でリフォームした家は、襖や障子を破られ、落書きだらけにされ、骨董品の花瓶もいくつか割られた。息子夫婦も『家ではできない事をやらせておけ』という方針で、こっちはストレスが溜まりっぱなし」(元会社員63歳)
息子・娘夫婦は、「孫がかわいいから、祖父母は喜んで世話をしているはず」と思い込んでいることが多い。それどころか、「孫の面倒をみさせてやって、むしろ親孝行をしている」とまで考えているふしがある。
それに対して、祖父母の側の心境は複雑だ。第一生命経済研究所が、2014年に孫がいる男女1000人を対象に行なった意識調査によると、「孫の世話は大変だが、娘や息子のためには引き受けるべきだ」という意見に、「そう思う」と答えた人は71.7%だった。だが一方で「子育ては、祖父母を頼らず、親自身で行うべきだ」という意見に対しては、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた人は、79.9%に達している。
祖父母のほとんどが、本来なら子供は親が育てるべきだが、息子・娘が困っているなら仕方がないという親心で引き受けているのだ。そんな気持ちを知ってか知らずか、図々しい“子供”もいる。近くのマンションに娘夫婦が住んでいる元会社員(65歳)は、怒りをこうぶちまける。
「家にいるといきなり娘から『子供を保育所に迎えに行ってくれる?』と電話がかかってくる。共稼ぎならまだしも、娘は専業主婦で、『友達とお茶をしている』『美容院にいる』といった理由ばかり。ほとんど使用人扱いですよ。
いつもは家内が行くが、私が初めて保育所に迎えに行ったときは『保護者登録がない』と拒否された。身分証明書もなかったので、警察まで呼ばれる始末」
もう災難というほかない。
※週刊ポスト2015年10月30日号