巨人のエース、そしてメジャーリーグでも活躍した横浜DeNAベイスターズの高橋尚成投手(40)は、2015年を最後に現役生活を退いた。プロ野球人生を振り返ると、大きな喜びとともに後悔も思い出されるという。それは、2010年、FA宣言をし、巨人からニューヨーク・メッツへ移籍してからのことだった。
当初は屈辱のマイナー契約だったがオープン戦での活躍が認められ、開幕直前にメジャー昇格を勝ち取ると、メッツでは25年ぶりとなる新人2桁勝利をマーク。しかし、活躍は長くは続かなかった。プロ野球人生最大の後悔もまた海の向こうだった。
「メッツからエンゼルスへ移籍する際、先発ではなくリリーフという契約でした。しかし、先発へのこだわりをどうしても捨てられなかった。それが仇になったんです。ある試合で、打者1人にワンポイントリリーフすることになった。その打者を打ち取るイメージで準備していると、試合展開が変わり他のピッチャーが投げることに。結局違う打者に対して投げたけど、準備不足で抑えられませんでした」(高橋、以下「」内同)
その後も“俺は先発の投手だ”という思いが活躍の幅を狭めた。
「その点、同級生で巨人のチームメートだった上原(浩治・レッドソックス)はしっかりと切り替え、あの活躍ぶりです。僕も彼のように気持ちをシフトできていたら、もう少し長く現役を続けられたと思う。僕は上原にはなれなかった」
その後も移籍を繰り返し、2013年のシーズン終了後、ロッキーズを自由契約となったタイミングで引退を決意した。しかし、そこで駒大の大先輩で当時DeNAの監督だった中畑清氏に声をかけられた。
「電話で“巨人に勝つためにはお前の力が必要だ。頼むから力を貸してくれ”と言われ、鳥肌が立ちました。即答で日本復帰を決めた。それだけに勝てない日が続いたのは悔しかった」
一旦野球人生に区切りをつけた高橋。今後はアメリカでの生活も視野に入れている。
●高橋尚成(たかはし・ひさのり)/1975年東京都生まれ。1999年に東芝からドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。2010年にニューヨーク・メッツに移籍。エンゼルス、パイレーツなどを経て、2013年に日本球界復帰。日米通算成績は429試合に登板、93勝85敗25セーブ、防御率3.82。
撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2015年10月30日号