横浜・山下公園から車で南へ約10分。湾岸沿いのマンション街の一角に、今年で創業50年を迎える『風間印房』という老舗ハンコ店がある。
人呼んで「開運ハンコ店」。ここでハンコを作ると幸運が訪れるという噂が口コミで広まり、芸能関係者やプロ野球選手をはじめ、会社経営者など著名な顧客も数多い。とくにここ10年はハンコを作った客に宝くじの高額当せん者が続出。開運ハンコの注文が殺到しているのだ。
「特別なことをしているつもりはないんです。厳選した印材に、丁寧に一字一字お名前を刻んでいくだけ。ですが、実際にハンコを作ったタレントさんのCM出演が決まったり、司会を務めていたバラエティーが長寿番組になったり、野球選手が試合で大活躍したりと、いい報告をくださるかたが多くいらっしゃるんです」
そう話すのは、店主の風間秀規さん(53才、以下「」内同)。カーレースのライセンスを持ち、趣味でハーレーダビッドソンも乗りこなす。1992年に創業者の父親から店を引き継いだ直後、不思議な幸運を目の当たりにしたという。
「知り合いの紹介で、ペットフードを販売する会社で営業マンをしていた30代の男性から“実印を作りたい”と注文をいただいたんです。ちょうどその時、新商品の琥珀を入荷したところだったので、それを使ってハンコを作りました。
しばらくして、その男性が高級外車を買ったと聞いたんです。それも3台も! なんでも、ハンコを作った直後に購入した宝くじで1億円を超える当せんをしたというんですよ。会社も辞めて、以前からの夢だったフリーペーパーを発行する会社を作ったそうです」
それから、風間さんのもとには客からの吉報が届き続けた。2004年の夏に店を訪れた女性も、宝くじの1等当せんを引き寄せたという。
「切羽詰まった声で、“おたくは開運印をやっていますか?”と電話で問い合わせがあったんです。開運書体といわれる『吉相体』のハンコを制作していましたので、それを伝えると1時間ほどで40代の女性が来店しました。Tシャツ姿で化粧っ気もなく、地味な印象のかたでしたね」
事情を聞くと、まだ大学生の子供が2人いるのに、夫が会社から早期退職を迫られ、「このままでは家族4人路頭に迷ってしまう」と藁をも掴む思いでやってきたという。女性は開運書体で直径18mmの立派な象牙のハンコを作った。
それから4か月ほど経った12月上旬、店の前に1000万円をゆうに超す高級外車が止まった。降りてきたのは、最高級のブランドバッグをさげ、毛皮に身を包んだマダム――身なりは変わったが、あの女性だった。サマージャンボで1等3億円に当せんしたのだという。
「ハンコを受け取った日がたまたまサマージャンボの販売最終日で、帰りに宝くじ売り場の近くを通りがかったときに“今日がラストチャンス!”というアナウンスを耳にしたそうです。そこで、バラで10枚だけ購入しようとしたら、最終日ということで売り切れ。しょうがなく連番で購入したら、その中から1等と前後賞が出たんです。もしバラが残っていたら当せんしていないわけですから、すごい偶然ですよね」
当せん報告にきた“マダム”は、さらにもう1本開運ハンコの作成を依頼。すると今度は直後の年末ジャンボで10万円が当せん。連続億当せんというわけにはいかなかったが、奇跡はこれで終わらなかった。共にハンコを作りに訪れていたマダムの娘が、ロト6で2等1680万円に当せんしたのだ。
「一家は都内にテナントビルも作って、家賃収入だけで月500万円ほど入ってくるそうです。開運ハンコのおかげだと本当に感謝されました。あの切羽詰まっていた彼女からは想像できない。本当に、人生何が起きるかわかりませんね」
※女性セブン2015年11月5日号