専業主婦ならぬ、専業主夫。男性が家の仕事をこなすケースが最近増えているというがそこには複雑な問題もある。真木よう子(33才)も元俳優の片山怜雄氏(33才)との結婚生活に7年足らずでピリオドを打ったが、収入的にヒモ状態の父親がいるよりはシングルマザーのほうがいいと判断した、とも報じられている。実際、専業主夫をしている人は、その状況をどう感じているのだろうか。
会社員だったA男さん(43才)は、両親が共働きの寂しさで1才の息子に笑顔が消えたと感じ、「幼い頃は親がそばにいるべき」と、離職に踏み切った。
「妻は勤務医を続けたいと言うし、収入も高かったので、ぼくが辞めたんです。主夫になることは妻も了承していたはずなのに、今では“私が家族を食わしてやっているのよ”というオーラ全開。ちょっとでも物が散らばっていると、“なんで掃除しないの? 今日は何してたの?”ですから。ぼくだって仕事を続けたかったのに辞めて、ママ友との関係も頑張っているのに。なぜ“いつもありがとう”って、言えないのか…」
B男さんも続ける。
「実は私は妻の友人が家に遊びに来た時には、会社員のフリをしているんです。妻はあまり私の状況を周りに話してないんですよね…。でもそれって私の存在を否定していますよね。そんなこともあって、夫婦げんかは前より増えましたよ。妻の方でも周囲に言えないような“主夫”というポジションにいる私にイライラしてるんでしょう」
B男さんはストレス発散と社会とのつながりを求めてパソコン教室で講師のアルバイトを始めたが、これが、「私のサラリーじゃ満足できないの?」とかえって妻を刺激してしまい、ますます険悪に。「幸せになるための主夫の選択は正しかったのか」と、自問自答する毎日だという。
ここまで専業主夫の苦悩を読み、ハッとした人も多いことだろう。そう、女性とはダブルスタンダードなのだ。
妻が自ら一家の大黒柱として働くのを覚悟したにもかかわらず、旧来の価値観で時に夫に「男だったら――」と男性らしさを求めてしまい、専業主夫として生きていくと決めた夫を困らせる。しかも、いざ離婚となったら「母親」の立場で親権も主張する。
夫が専業主夫のケースの離婚に関する、離婚問題に詳しい田村勇人弁護士は、親権について夫の分の悪さを指摘する。
「親権については監護の継続性が重視され、子供が幼い場合は母親が圧倒的に有利。それは妊娠10か月という期間の差や、母乳で育てていれば一緒にいたとされることも大きな判断材料となります。
ですが、育児を一任されてきた主夫が監護の継続性を主張すれば、勝ち取れる可能性もなくはない。ただ“専業主婦”と“専業主夫”を比べると親権を取るハードルは高いし、“専業主夫”は“専業主婦”よりずっと頑張らないといけません」
だが皮肉なことに、子供にとって母親の存在がいかに大きいか、身に染みているのも主夫だったりするのだ。家庭科の教員免許を持つ「主夫芸人」の中村シュフさん(36才)が呟く。
「結局、自分の感情よりも子供の幸せをどうとるか。毎日そばにいて、看病するのがぼくでも、病気になると子供は“パパありがとう”より、“ママはなんでいないの”って、言いますから。今回の件は、何をもって大人は子の幸せを願うのかを考えるきっかけとなる深い問題だと思います」
※女性セブン2015年11月5日号