最近の冷凍チャーハンには、まるでプロの料理人が作ったかのような本格的なものが登場し、冷凍チャーハンブームが起きている。ニチレイフーズの「本格炒め炒飯」を筆頭に「炒める」という製造工程が加わったことで、味が格段に向上したと評判だ。さらに、マーケットの変化も指摘されている。冷凍食品やチルド食品について取り扱う業界紙『冷凍食品新聞』の多田祐介・編集長はこういう。
「冷凍食品の主力商品だったコロッケなど弁当のおかずが、少子化の影響で需要減の傾向にあります。そこで、大手の冷凍食品メーカーは得意分野の見直しを行ない、主食である米飯を改良する動きが進んでいます。今年に入ってからは特に、各社設備投資やCM展開といった形で力を入れています」
前述の通り、ニチレイが「炒める」工程を組み込んでから、他社も追随したことで本格的な味を競う「冷凍チャーハン戦争」が勃発した。
その影響もあり、冷凍チャーハン市場は右肩上がりの成長を続けている。この5年間で売り上げは27%増。ニチレイはこの春に30億円を投資して工場にチャーハン製造のためのラインを新設し、15年ぶりに主力の「本格炒め炒飯」をリニューアルした。
国内だけでなく、海外でも冷凍チャーハン熱が高まっている。味の素は24億円かけて北米市場向けに冷凍米飯の製造ラインを現地に新設し、生産能力を1.5倍に増やした。最も売れているのが、大手スーパーのコストコ向けに販売している「ヤキトリチキン ウィズ ジャパニーズ スタイル フライド ライス」だ。
「米国冷凍食品の市場は5兆円ともいわれるなか、米飯市場はアジア食ブームに乗って毎年2ケタ成長を続けており、当社商品は米国でも人気です。そのため工場の生産能力を向上させました」(味の素広報部)
また、冷凍チャーハンは企業にとって優等生でもあるのだという。経済ジャーナリストの荻原博子氏はこう分析する。
「冷凍チャーハンは利益率が高いといわれています。例えばスパゲッティの場合、ミートソースやカルボナーラ、ナポリタンなど種類によって具材や工程が異なり、商品は単一の生産ラインでは作れません。が、チャーハンでしたら味付けを変えるだけで同一の生産ラインでの製造が可能なので、効率良く生産できます。また、輸入食材が値上がり傾向の中で、米は値下がりしているので原価率を低く抑えられます」
※週刊ポスト2015年11月6日号