中国人の観光客が、日本の繁華街で「爆買い」する姿も、もはやお馴染みとなった。日本国内のいろいろな観光地にもたくさんの中国人が訪れている。経済面で彼らの存在に感謝する人も多いことだろう。
しかし、海外では“中国人お断り”の場所も多い。今年、タイ北部チェンライの仏教寺院、ワット・ロンクンは、トイレの使い方のマナーの悪さから、一時中国人の拝観を断り、話題になった。
中国人対策をする国も多く、イタリア・ベネチアの観光エリアには、「中国人観光客は、観光地でむやみにゴミを捨ててはならない」「観光地で甲高い声で騒いではならない」「観光地でむやみに落書きしてはならない」という中国語の注意書きがある。ドイツ・ミュンヘン近郊の土産物屋のトイレには、中国語のみで「トイレは使用後流すこと」と明らかに中国人のみを対象にした注意書きが書かれている。
日本ではどうか? 実は、今年の春、銀座の高級鮨店が、「中国人客を断った」ことが、インターネット上で拡散し、“炎上”した。日本在住の中国人ジャーナリストが店に電話して予約を取ろうとしたところ、名前で外国人だとわかると「調整が必要です」と言われ予約できなかった。そのことを自身のフェイスブックで「信じられない」と暴露したのだ。
都内の飲食店関係者はこの騒ぎを聞いたとき、「同業者としてよくわかる」と思ったと言う。
「とにかく大きな声で話すので騒々しい。ドタキャンは当たり前で、仕込みが無駄になることも。極めつきは、持ち込みです。どこかで買ってきたような食べ物や飲み物を堂々と広げて食べるんですよ。もちろん、これは一部の客です。でも、本音を言えば、中国人はお断りにしたい。でも、あの炎上騒ぎの二の舞にはなりたくないんです」
前出の鮨店は騒動当時、取材に対し、「海外の客は予約をしたのに来ないなどトラブルが多い。そのため、外国人はホテルのコンシェルジュかカード会社を通じた予約に限定している」と答えた。しかし、店に対するバッシングは中国人のみならず、日本人からも上がった。それは、「おもてなしの国なのにあんまりだ」「どんな相手にもサービスするのが日本人だろう」というものだった。
2013年、東京五輪誘致のスピーチで滝川クリステルが「お・も・て・な・し」とスピーチし、一躍流行語となった。手を合わせ、頭を軽く下げる動作を伴ったこの言葉は、日本人のホスピタリティ(心のこもったもてなし、歓待の気持ち)の篤さを強く印象づけたが、それが今、私たち日本人を縛りつけているのかもしれない。
飛行機の搭乗に目を向けても、この傾向はみられる。「爆買い」をした中国人観光客は、飛行機に載せられる重量をオーバーした荷物を預けようとすることも。追加料金を払うよう伝えても、断固として払わない人もいると航空会社勤務の女性が言う。さらには、少しでも荷物を減らそうと、空港のゴミ箱に商品の箱やその他いらないものを捨てていくというのだ。この女性が続ける。
「私たちも、ゴミ捨てを禁止したり、重量オーバーや時間に遅れてくる人に対しては“搭乗拒否”をしても良いと思うんです。でも、日本人はそんなことをしない、と海外から思われて、何より日本人がそう信じている。そんな空気の中で、ルールはルール、と主張しても受け入れられないんじゃないでしょうか」
※女性セブン2015年11月5日号