家のトイレで小便をする際、「座ってする」男性が増えている。今年3月にライオンが発表した調査では、38.0%の男性が「座りション」派で、2008年の26.8%から急増している(「掃除行動実態調査」)。主に汚れることを嫌う妻ら同居家族からの要請のためだ。
実際、立ちション時に起こる「尿ハネ」は、トイレの汚れだけでなく悪臭の原因にもなる。
「尿ハネが乾燥すると硫黄含有化合物の臭いが発生します。熟成しすぎたチーズの臭いに似た不快臭です」(ライオン快適生活研究所)
ならば“ハネないように気をつければいいじゃないか”と思うかもしれないが、それはかなり難しい。米国・ブリガムヤング大学の物理学者・ランディ・ハード氏らが2013年に「尿ハネ」について検証している。
液体の塊は表面エネルギーなどの関係で、一定距離を落下すると液滴に分裂する。これを「プラトー・レイリー不安定性」と呼ぶのだが、小便は15~18センチの高さから落下すると液滴に分裂し便器の外にはじけ飛ぶという研究結果を発表した。
本誌記者も自宅で挑戦してみたが、家庭用のトイレで尿ハネを防ぐ「便器から18センチ以内」を実践するには座らなければほぼ不可能である。
最新の物理学で「座らないと汚れる」と証明されたわけだが、それでも「俺は立ってする」というのが俳優の梅沢富美男(64)だ。
「最近は座ってする男が増えて嘆かわしいよ。掃除が大変だからっていう理由には男らしさがないね。きちんと稼いで、オンナを大切にしていれば掃除云々と文句をいわれることはない」
とはいえ妻に「男たるもの」などといえる夫はどんどん減っている。そこで妻に対して歩み寄りを見せることで「権利」を勝ち取った男性もいる。
「座ってしても出し切った爽快感がない。それで妻に“家事の分担でトイレ掃除を担当する”と提案し、なんとか許してもらった」(40代・建設業)
まだまだ「座る」ことに納得できない男性も多い。この論争、用を足した後のように、スッキリとはいかない。
※週刊ポスト2015年11月6日号