安倍晋三首相は「金融緩和」「財政政策」「成長戦略」という“3本の矢”により経済成長の実現を目指しているが、大前研一氏は「容積率の緩和」が最も有効な成長戦略だと語る。というのも、東京の建物は低いものが多く、せめて山手線の内側だけでもパリ並にすれば、建物の床面積は2倍になるというのだ。容積率は「敷地面積に対する建物の延べ面積の割合」で決まるが、大前氏は容積率決定の問題点を指摘する。
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建蔽率と容積率は、建築基準法により「第一種低層住居専用地域」などの用途地域ごとに決められることになっている。原則として建蔽率が30~80%、容積率が50~1300%の範囲で制限が定められているが、そもそもそれらの数値にどんな根拠があるのか、さっぱりわからない。
たとえば、大阪・中之島の再開発で2012年に竣工した朝日新聞大阪本社ビル(中之島フェスティバルタワー)。同地域の容積率は1000%だったが、特区(都市再生特別地区)認定という意味不明の理屈によって1600%という突出した容積率が認められた。それにより、高さ200m、地上39階・地下3階建ての超高層ビルができたのだ。
もともと中之島は淀川の中州地帯であり、地盤が脆弱な地域だ。そこに容積率1600%、高さ200mもの高層ビルの建築を認めたということは、結局、容積率の基準値は厳密な安全性や耐震性の確固たる裏付けに基づいたものではなく、役人のサジ加減ひとつでどうにでもなる恣意的な代物だという証左である。
ましてや朝日新聞を敵に回すと何を書かれるかわからないという思惑があったとすれば、規制の根拠はますます薄弱になる。そういうわけのわからない規制があるから、日本の都市開発は遅々として進まないのだ。
※SAPIO2015年11月号