警察官の不祥事が後を絶たない。警察庁によると、昨年1年間の警察官の懲戒処分者数は300人。処分理由の内訳では、セクハラを含む異性関係が80人と最多を占めた。逮捕された警察官は71人で、こちらも罪状は痴漢や盗撮などのわいせつ行為が33人と実に半数近くに上っている。
『なぜ警察官の犯罪がなくならないのか 元熱血刑事がテレビで言えなかったこと』の著者で元兵庫県警の飛松五男氏は、「警察官の質が低下してしまった」と嘆息する。
「地域の家庭を1軒1軒回る『巡回連絡』は警察官の基本だが、最近の若い警察官は行ったことを“偽装”する者が多いと聞く。犯罪抑止にならないどころか、サボって時間ができるゆえに余計なことを考えて悪事に手を染めるのだろう」
不祥事が続発する背景には、組織としての事情もあるという。
「年々警察官採用試験の受験者は減少傾向にある。しかし治安維持のために頭数は確保しなければならない。だから多少の質の悪さには目をつぶって、採用しているのも事実。それが結果的に、劣悪な警察官を生んでしまっているのかもしれません」(現職警察官)
組織論に詳しい同志社大学の太田肇教授は警察官が犯罪に走る要因として「行き過ぎた管理」を指摘する。
「近年コンプライアンスの重要性が叫ばれるなかで警察も管理が厳しくなっています。例えば外部の人間との飲み会にもいちいち上司の決裁が必要になっている。合コンにも決裁となると交際相手を見つけるのも難しくなり、鬱憤もたまる。
それで不祥事が許されるわけではないが、抑圧の反動が羽目を外し過ぎた行為や不祥事に繋がっているのではないか。管理され過ぎると上司の顔色ばかり窺うようになり、自分の判断や責任を自覚しなくなる。もっと現場の警察官に裁量を与えてプロ意識を持たせるべき」
不祥事を検証して組織の在り方を厳しく内省しなければ、明日もまた市民に頭を下げる記者会見が開かれるだろう。
※週刊ポスト2015年11月6日号