「天守台に据えやー!」──10月24日、晴天の青森県弘前城本丸。葛西憲之弘前市長の号令で、高さ14.4メートル、重さ約400トン、3階3層建ての天守が27基の油圧ジャッキで降ろされ、仮設天守台にのせられた。来年から始まる石垣の解体改修工事に伴う天守の「引っ越し」が完了した瞬間である。
今回の移設方法は、天守を解体せずそのままの状態で移動させる曳屋工事。大正4(1915)年以来となる100年ぶりの平成の大工事は、本丸南東の石垣の上から77.62メートル離れた本丸中央へ70日間かけて行なわれた。1日に平均すると約1メートルずつの移動。背後から推進ジャッキで押してレールの上を動かしていった。
「最大の難関のひとつが400トンの天守を1メートル持ち上げてその間にレールを敷き、降ろすという工程でした」(弘前市公園緑地課・神雅昭総括主幹)
石垣の修理が一部終わり、天守が元の位置に戻るのは2021年。次の「引っ越し」も無事成功となってほしい。
撮影■太田真三
※週刊ポスト2015年11月13日号