中国の有毒食品はいまさら驚くべきことではないが、殺虫剤のDDTが入った貴州茅台酒が北京で売られていたことが分かった。中国の最高級酒である貴州茅台酒は、度数の強い蒸留酒である白酒のなかでも絶品といわれ、「国酒」(国を代表する酒)や「酒中珍珠」(酒の中の真珠)と呼ばれ珍重されている。
日中国交回復の宴席では、周恩来首相が田中角栄首相をこの酒で接待したことは極めて有名な話だ。これがきっかけとなって、日本にも輸出されていると、北京紙「新京報」が伝えた。
茅台酒は熟成期間が3年以上で、透明にして芳香に富むことが最大の特徴だ。とりわけ、貴州茅台酒はその香りは馥郁(ふくいく)として素晴らしく、度数も50度以上とアルコール度数が高く、もっとも気分よく酔うことができる酒と言われる。
そのような最高級酒の偽物の最大の特徴もその香りにある。安い白酒にDDTを混ぜると、貴州茅台酒の馥郁とした香りが再現されるというから驚きだ。
これを利用したのが、中国の内陸部の陝西省漢中市の酒造会社で、これまでに数万本の貴州茅台酒の偽物を製造し、北京市をはじめ、全国の商店に卸していたという。
同社の社長は陝西省の裁判所で、懲役6カ月、罰金1万元(約20万円)の有罪判決を受けた。このため、同紙は北京市内の商店で売られている貴州茅台酒を4種類購入し、専門家の協力を得て、DDTが混入していないかどうかを確かめた。その結果、1種類の貴州茅台酒からDDTが検出されたという。
DDTはもともと殺虫剤として開発され、マラリアの原因となる蚊の駆除などに使われた。日本でも戦後すぐに米軍が害虫駆除のため、日本人児童らにDDTの粉末を振りかけたことはよく知られる。しかし、その後、DDTには発がん物質が含まれ、環境ホルモンとして機能することが判明したため、世界各国で使用は全面的に禁止されている。
同紙によると、人間がDDTを0.5グラムから5グラム摂取すると死に至る危険性があり、中国内ではここ数年間で、偽の貴州茅台酒を飲んで、少なくとも10人が死亡した疑いがあるという。