〈猫、犬を逆転の勢い〉──猫の飼育数が犬の飼育数を上回りそうだという朝日新聞の記事が犬好き、猫好きの間で話題になっている。ペットを飼うことは「癒し」の効果があることは事実のようだ。
ある老人ホームが施設内で犬や猫、小鳥を飼い始めたところ、4割もいた寝たきりの入居者がゼロになったという驚くような実例もある。また、別の老人ホームでの調査では、動物と触れ合う前後で血圧を測ったところ、触れ合った後には血圧が下がったという。では、「飼い主を長生きさせる」という面では犬と猫のどちらに軍配が上がるのだろうか。
セラピー効果については、東京農業大学農学部の太田光明教授が次のような実験結果を発表している。
55人の飼い主に1人30分ずつ飼い犬と触れ合ってもらい、実験前後の飼い主の尿に含まれるオキシトシンの濃度を測定。オキシトシンは“幸せホルモン”と呼ばれるもので、その濃度が高いほど心身の健康に良いと考えられている。
この実験の結果、13人のオキシトシン濃度が大きく上昇し、13人全員が事前のアンケートで飼い犬との関係が『良好』と答えていた。一方、オキシトシンの上昇が見られなかった42人は、いずれも飼い犬との関係が良好とはいえない、というものだった。
飼い犬との関係が良いほど、犬から受ける癒しの効果も大きいというわけだ。ちなみに猫に関しては、「実験時にストレスを感じやすいので実施が難しい」(太田教授)とのこと。ペットセラピーといえば、その多くがドッグセラピーとして行なわれているようだ。
だが、猫の飼い主たちは、猫による“癒し”を実感している。ペットフード協会名誉会長・越村義雄氏はこう指摘する。
「犬や猫を飼っている高齢者に『生活に喜びを与えるもの』を聞いたところ、猫の飼い主は1番に猫を挙げ、2番目が家族。犬の飼い主の場合、1番が家族、2番目が犬でした」
この結果を見ると、猫のほうが飼い主の心に深く入り込んでいるようだ。
※週刊ポスト2015年11月13日号