官邸の実権を握り、危機管理を一手に担ってきた菅義偉官房長官はいまや「影の総理」と呼ばれるほどの実力を持つ。力の源泉は、菅氏が公明党支持母体の創価学会中枢や橋下維新という政権の「2大補完勢力」に太いパイプを持っていることにある。
創価学会とは「政治担当の副会長を通じて原田稔・会長、谷川佳樹・事務総長と直で話せる関係」(菅側近議員)とされ、橋下徹氏とはそもそも同氏の政界進出を後押ししたのが菅氏という関係だ。
安倍晋三首相が菅氏を手放せないのは、政権運営のために、そうした菅氏のパイプに頼らざるを得ないからだ。事実、安保法制は公明党の賛成がなければ成立させることができなかったし、今年6月には、菅氏が首相と橋下、松井一郎両氏との4者会談をセットして法案への協力を要請した。
さらに官僚の人事権を押さえて霞が関ににらみを利かせているのも菅氏である。「安倍一強」ともいわれる体制は、「菅氏の存在がなければ成り立たない」(官邸スタッフ)のが実情なのだ。
しかし、安倍首相はいま、「菅離れ」を始めている。おおさか維新と自民党大阪府連が激突している大阪府ダブル選挙(知事選と市長選の同日選挙)について、安倍首相が谷垣禎一・幹事長に「きちっと戦わなければ大阪の自民党の勢力は立ち直れない」と全面対決を指示したからだ。
「菅長官は橋下-松井ラインとのパイプを誇示してきたし、総理も悲願の憲法改正には維新の党の協力が必要だと考えて関係を重視してきた。しかし、維新は結局、安保法案反対に回ったではないか。
そのうえ維新の党そのものが分裂して補完勢力としての価値はなくなった。総理が橋下維新との全面対決を指示したのは、切り捨ててもかまわないという判断で、それだけ菅さんの存在価値も下がったということだろう」(安倍側近)
安倍首相が菅氏に任せてきた沖縄の米軍基地辺野古移設問題が完全にこじれていることも「総理の不興を買っている」(自民党防衛族議員)と見られている。
※週刊ポスト2015年11月13日号