濃紺のスーツに中折れ帽、サングラスという異様な姿で会議室に入ってきた森喜朗・元首相(東京五輪・パラリンピック組織委員会会長)に、報道陣はざわついた。そして次の瞬間、「いずれわかることなので、今日お披露目しようか」と帽子を取ると、白い頭髪が短く刈り込まれた坊主頭が露わになり、ざわめきはさらに大きくなった。
10月26日、組織委のアスリート委員会の席上でのことだ。2時間の会合終了後、記者団に坊主頭の理由を聞かれた森氏は不機嫌そうにこう答えている。
「みんなが責任取れというから、いっそきれいに坊主頭にした。坊主にした方が楽だから。それだけだ」
たしかに迷走続きの五輪準備を巡って、森氏への批判は収まらない。
新国立競技場の白紙撤回については、森氏もメンバーである日本スポーツ振興センター(JSC)の有識者会議が検証委員会から「有害無益だった」と断罪され、組織委が選定した公式エンブレムも“パクリ騒動”で見直しに。頭を丸める理由にはなる。しかし、このタイミングでの“反省”に都政担当記者は首をかしげる。
「エンブレム問題で組織委幹部の処分を発表した9月28日の会見で森さんは『国民のみなさまにご心配をかけた』と柄にもなく謝罪しています。なぜその時ではなく、今になって直接関係のない委員会で坊主になったのか、よくわからない」
そのため、記者の間では「病状が悪いのでは」と囁かれている。森氏は肺がんを患い、3月に左肺の摘出手術を受けている。別の都政担当記者が語る。
「もし手術で完治してないなら、年齢的にも再手術は難しいでしょう。今後、抗がん剤治療で髪が抜け落ちるから刈り込んだのかもしれません。最近はボソボソとしゃべることが多く元気がないように見えることもあり、森氏の体調を心配する組織委の職員は結構います」
とはいえ、森氏は日本代表が歴史的勝利を収めたラグビーW杯・南アフリカ戦をイギリスまで出向いて観戦しているし、冒頭の会合後、記者団から体調を心配する質問が飛んだ際も、
「普段マスコミはプライバシーとかいうくせに、こういう時にはそんなこと聞くのか、失礼だろう。もっと五輪に関係ある取材をしろ!」
と一喝する健在ぶりを見せているから心配なさそう。
シニア世代の坊主は、やんジイ(やんちゃジジイ)スタイルを提唱する岸田一郎氏(元『LEON』編集長)も推奨しているし、委員会で森氏がかぶっていた中折れ帽は「イタリアの老舗帽子ブランド『ボルサリーノ』製で麻生太郎・副総理が外遊などの際に身につけたり、キングカズこと三浦知良選手など多くの著名人が愛用する高級ブランド」(前出・一人目の都政担当記者)という。
※週刊ポスト2015年11月13日号