2016年1月のマイナンバー制度導入を前に、韓国紙「ハンギョレ」(9月10日付)は「日本は(マイナンバー導入で)韓国式監視社会のドアを開けた」と警鐘を鳴らした。韓国では半世紀前に始まった「住民登録番号」制度で国民の情報を管理。番号にはあらゆる情報が紐付けられ、個人のプライバシーが丸裸にされている。日本でこれから起こることを考えるために、「監視国家」韓国の実情を見ていこう。
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朴正熙政権下の1968年、北朝鮮兵士による大統領官邸襲撃未遂事件が発生した韓国では、スパイの識別を目的とした「住民登録番号」制度の運用を開始。全国民が番号で一元管理されるようになった。
韓国の全国民が出生時に付与される13桁の住民登録番号は、前半6桁が生年月日、後半7桁は性別や出生地などを示す構成で、17歳以上の国民には顔写真入りの「住民登録証(住民カード)」が発給されている。住民カードの表に記載されるのは氏名・住所・住民登録番号。裏面には拇印が印刷されており、「公的身分証」としても大きな役割を持っている。
住民登録番号は日本の総務省にあたる「行政自治部」が管理し、各省庁の行政事務に利用されている。住民登録番号には戸籍、住所、社会保険、年金、出入国記録、学歴、徴兵歴、犯罪歴などの情報が紐付けられており、番号ひとつで各種行政手続きが可能だ。病院では健康保険証を忘れても番号で受診できるなど、メリットもある。また、脱税や生活保護の不正受給防止、犯罪捜査にも活用されてきた。
民間では、銀行口座の開設やクレジットカードの申請、ネット、携帯電話の利用、車や不動産の売買など「本人確認」が必要なサービスで住民登録番号の提示が不可欠だ。学校、職場では学生や従業員の管理に住民登録番号を利用しており、韓国人の生活と切り離せないものになっている。
こうして、あらゆる個人情報に紐付けられた番号は、国や企業のデータベースに集積されている。当局がその気になれば、住民登録番号を元に個人の身元や経歴だけでなく、思想や宗教、預貯金、病歴といった様々なプライバシーが把握できるということだ。今後、韓国政府は住民カードを改良し、新たに血液型などの付加情報も組み込む予定だという。
※SAPIO2015年12月号