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【書評】ボーダーラインを越えると際限がなくなる怖さを検証

【書評】『生身の暴力論』久田将義著/講談社現代新書/760円+税

【評者】嵐山光三郎(作家)

 殴りあう喧嘩をしたことがある人間は、事態の収拾で苦労することを知っている。負ければ屈辱感が残るが、勝てば仕返しを恐れる。プロのヤクザならば、徹底的に相手を痛めつけ、抵抗する気が失せるくらいやる。しかし、傷害容疑で逮捕される恐れがある。

 暴力のボーダーラインを一回越えると際限がなくなる。不良少年のデビューは、飲酒、喫煙、武器を使用しての喧嘩、カツアゲ、性行為の五つと久田氏は分析する。いままで百人以上の不良少年、暴走族、ヤクザを取材してきた久田氏は、日本における暴力のピラミッドはヤクザが頂点であるとする。つぎに準暴力団の暴走族OB、企業舎弟がつづく。

 不良少年デビューの性行為で一番若い少年は小学校三年だったという。ゴリッパと驚嘆するのも妙だが、最近は「人を殺してみたかった」という少年や女子大生の事件がふえている。「人を殺してみたかった」というフレーズがメディアやネットに蔓延して、動機不明の暴力が流行する。

 川崎市中学生殺人事件の加害者は暴力のピラミッドのどこにも属さない部外者だ。十八歳、十七歳の加害者には、生粋の不良少年が持つべき特性がなく、五歳も年下の中学一年生のA君(十三歳)を殺害した。むごたらしい卑劣きわまる事件である。そして、ハンドル名「ノエル」と名乗る十五歳の少年は、主犯の家から生放送をした。どうなってんの。

 この書には新旧の暴力事件が登場し、「殺人者はなぜトロンとした眠そうな目をするのか」と問いかける。スルドイ観察眼だ。先日、野球のナイターへ行ったとき、出所したばかりと思われるヤクザが、七人の組員に囲まれて観戦にきていた。キャンデーをかじりながら、目がトローンとしていた。

 久田氏によると新選組の土方歳三の目が眠そうなトローンとした目をしており、優しげな目をした人が剣鬼となる一瞬が恐ろしい。という次第で、トローンとした眠そうな人が寄ってきたら、御用心、御用心。

※週刊ポスト2015年11月13日号

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