93作目にして初めて幕末がストーリーの始まりとなったNHK朝ドラ『あさが来た』。スタートから好調が続き、視聴率は4週連続で20%の大台を突破。第3週には21.4%、第4週は22.3%と右肩上がりだ。
波瑠演じるヒロイン・あさは、京都の豪商・今井家の次女で、相撲好きのおてんば娘。大阪の両替商・加野屋に嫁ぎ、明治維新後の混乱の中、傾きかけた加野屋の経営を立て直そうと奮闘中だ。
人気の秘密はどこにあるのか。『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版刊)の著者でライターの田幸和歌子氏はこう分析する。
「現代を舞台とする朝ドラは小さくまとまりがちですが、『あさが来た』はヒロインが時代の荒波をすいすいと泳ぎたくましく生きていく。スピード感があるから、視聴者が退屈しない。同じくモデルが存在した『マッサン』と比べても物語の進行が早く、今後も大きなイベントが目白押しなので、期待できそうです」
あさのモデルは「明治の女傑」と呼ばれた広岡浅子。物語は今後、ヒロインが女性実業家として激動の時代を切り開き、日本初の女子大設立に奔走する姿を描いていくことになる。
めまぐるしく展開が変わるが、朝ドラウォッチャーとして知られる上智大学教授(メディア論)の碓井広義氏はその魅力をこう語る。
「物語の軸がしっかりしていて、なによりヒロインがいい。ドラマではいろんな出来事が起こりますが、彼女は明るくて、めげないし、しかも女性らしい柔らかさがある。朝から見ていて気持ちがいいんです。後に女傑と呼ばれるようになりますが、“鉄の女”ではなく、裏に優しさがありますね」
あさは今後、東京に行き、女性実業家として成功の道を歩むことになる。そこで出会う人物たちにも注目だ。
「渋沢栄一、大隈重信、井上馨など明治の政財界の大物たちと出会っていきますが、彼らをどんな人物像で描き、どんな役者が演じるのか。楽しみは尽きません」(同前)
そしてこの先も気になるのが、たびたび登場する五代才助(大阪府権判事=後の友厚)との関係だ。
「あさが一緒に上京する相手は、夫の新次郎ではなく、五代なんですよ」(テレビ誌記者)
田幸氏は「さすがに朝ドラで主人公の不倫はないでしょう」と予測するが、もしかしてあさの口癖である「びっくりぽん」な展開が待っていたりして……。見逃せない朝が続きそうだ。
※週刊ポスト2015年11月13日号