年間1.8万人の死者を出し、日本人のがん死亡数の第6位に位置する「胆管がん」。今年9月、激やせの末に亡くなった川島なお美さんを襲ったのもこの病だった。今、彼女の胆管がんの「最善の治療法」がどこにあったのかを巡り、有名医師が激論を交している。手術回避か、即メスを入れるべきだったのか。どんなに議論をつくしても彼女が帰ってくるわけではないが、2人の医師の主張から、がん治療の難しい現実が見えてくる──。
川島なお美(享年54)が胆管がんで亡くなってひと月あまり。都心の高級マンションに残された夫の鎧塚俊彦氏(50才)は計り知れない喪失感を抱えながら、ようやく前を向き始めている。
「先日、すれ違ったら“その節はさまざまなご配慮ありがとうございました”と丁寧に挨拶されました。毎朝きちんと出勤されていますし、少しずつですが以前の日常が戻りつつあるようです」(近隣住民)
しかし、四十九日を目前に控えた今、泉下の川島も穏やかではない議論が起きている。
発端は『文藝春秋』11月号だった。「手術も抗がん剤も患者には有害である」とする“がん放置療法”で知られる近藤誠医師が登場し、川島が2年前に近藤医師の外来を訪れ、がん治療のセカンドオピニオンを受けていたことを告白。近藤医師は川島に外科手術の無意味さを説き、別の治療法を提案したと明かした。
女性セブンの取材に応じた近藤医師は、改めて当時の川島とのやりとりを説明する。最初にコンタクトがあったのは2013年8月29日。「鎧塚なお美」の名でメールが届き、2週間後に川島本人が都心の近藤医師のセカンドオピニオン外来を訪れたという。
「お一人で来られました。白いワンピースにつばの広いおしゃれな帽子をかぶっておられてね。実に凜として、落ち着いていました」(近藤医師)
川島は8月中旬の人間ドックで肝臓に影が映り、その後のMRI検査で胆管がんと診断されたと説明した。
「彼女が持参した検査画像を見るとがんの病巣は2cmほどでした。その時点で転移は確認できませんでしたが、胆管がんは予後の悪いがんのひとつです。肝臓の中を這うように広がっていることが多く、いずれ転移が発覚する可能性が高かった」(近藤医師)
診察時、川島はミュージカルの舞台を優先するため、体にメスを入れることは避けたいと訴えたという。
川島の意志を汲むように、近藤医師は手術の回避を提案した。理由についてこう語る。
「直径2cmのがんの中には、80億個のがん細胞が詰まっています。実測データとして、転移能力のあるがんかどうかは、病巣が1ミリ以下(がん細胞100万個)の時点で決まっています。川島さんのがんがあの時点で転移していなければ、それは転移能力がない“がんもどき”であり、放置してもいい。逆に転移していれば肝臓の切除術をしても再発するので意味はない。いずれにせよ、手術は無駄なんです」
むしろ、手術自体が転移を加速させ、再発を早める危険性を持っているのだという。