国内

秋田から日本酒に革命を起こす「ネクスト5」の挑戦【前編】

東大卒の「革命児」といわれる新政酒造の佐藤祐輔氏

 いま、秋田県から日本酒革命が起ころうとしている。一躍注目を集める5蔵が集まり、次世代を見据えた酒造りの研究会「ネクスト5」を立ち上げたのだ。その挑戦に、ノンフィクション作家の一志治夫氏が迫る。(前編:文中敬称略)

 * * *
 乳酸が醸すまろやかな旨味とほんのりとした酸味、それでいて、舌にしつこく残らぬ香りの爽やかさ。かつてこんな鮮烈な飲み口の日本酒が存在しただろうか──。

 2010年冬、秋田・新政(あらまさ)酒造の日本酒『No.6』が発表されると、飲食業界に衝撃が走った。数年経ったいまも、東京の有名飲食店や左党の間では『新政』の酒をいかに入手するかが話題となり続けている。「1人2本まで」などと販売制限を設けている酒販店も少なくない。

『新政』の大躍進に牽引されるかのように、『ゆきの美人』『一白水成(いっぱくすいせい)』『山本』『春霞』を送り出す秋田の4蔵も注目を集め、引く手あまたの状況が続いている。この5蔵が集まり、次世代を見据えた酒造りの研究会「ネクスト5」を立ち上げたのは2010年のことだ。

『山本』『白瀑(しらたき)』の蔵元である山本友文(45)がいう。

「我々が目指しているのは、お互いを高め合い、徹底した品質本位を貫くこと。技術的にわからないことがあれば、5人の誰かしらが答えてくれる。一方でライバルでもあり、私は遅れをとらないようにメンバーの新しい酒は必ず飲んでいます。みんな、さらにブランド力を上げて日本酒の価値を高めたいと思っている」

 5蔵が使う米や酵母はばらばらで味もそれぞれ異なるが、どの酒も綺麗な飲み口で旨く、食事に合う。代々続く老舗ながら、ここ10年ほどでまったく新しい方向性を打ち出してきたことも共通項だ。

 先鞭をつけたのは『ゆきの美人』を手がけた小林忠彦(53)だ。小林はプログラミングの仕事を辞め、1987年に東京から実家の蔵に戻ってきた。それまでも酒造りの知識はそれなりにあったが、県内の醸造試験場にも通い技術を磨いた。小林が振り返る。

「当時は杜氏(とうじ)さんを使って冬の間に集中的に酒造りをするスタイルが一般的でした。でも私は自分で設計し、思った通りの酒を造りたかった。12年前に思い立ち、杜氏さんに辞めてもらって、試行錯誤で酒造りを始めたんです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見なえい恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
事務所独立と妊娠を発表した中川翔子。
【独占・中川翔子】妊娠・独立発表後初インタビュー 今の本音を直撃! そして“整形疑惑”も出た「最近やめた2つのこと」
NEWSポストセブン
名物企画ENT座談会を開催(左から中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏/撮影=山崎力夫)
【江本孟紀氏×中畑清氏×達川光男氏】解説者3人が阿部巨人の課題を指摘「マー君は二軍で当然」「二軍の年俸が10億円」「マルティネスは明らかに練習不足」
週刊ポスト
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン