今期ドラマで最高視聴率の18.6%を記録し、絶好調の連続ドラマ『下町ロケット』(TBS系)。主演の阿部寛以外にも、個性派俳優が脇を固めていることが好調の要因のひとつと言えるが、なかでも活躍が目立つのが吉川晃司だ。ミュージシャンでありながら役者として異彩を放つ吉川。テレビ解説者の木村隆志さんがその演技について分析する。
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吉川さんが『下町ロケット』で見せる存在感は、主演の阿部寛さんに匹敵するものがあります。これまで吉川さんは、大河ドラマ『天地人』『八重の桜』(ともにNHK)など時代劇への出演が多く、その他も映画『仮面ライダー』シリーズや、映画『るろうに剣心』などで、超人的なキャラクターを演じてきました。
それだけにスーツを着て現実世界のサラリーマンを演じているだけでも、目を引くものがあります。また、これまで世間や業界の常識に逆らい、一匹狼のようなスタンスで突き進んできた吉川さんが、企業の中で上司や部下にはさまれ、取引先との交渉に悩む姿は新鮮です。
1~2話では、「こんな町工場ごときが」という捨てセリフを連発するなど、悪役ぶりが目立ちましたが、第3話の終盤では一変。「素晴らしい技術だと思います」「私も帝国重工に入りたてのころはあなたと同じ気持ちだった」「どうやらここは私の知っている中小企業と違うようだ」と佃を称えるシーンがありました。これは佃製作所の仕事ぶりや職人魂に共感し、会社に逆らってでも自分の信じるものを貫くという決意表明。まるで、芸能界や大手芸能事務所に逆らってでも、自分の信じる音楽や生き様を貫いてきた吉川さんのようで、まさにハマリ役だと思いました。
同ドラマの演出を手がける福澤克雄さんは、『半沢直樹』『ルーズヴェルト・ゲーム』(ともにTBS系)で、顔をアップで撮る映像を多用していましたが、今回もその傾向が見られます。阿部さん、安田顕さん、立川談春さん、池畑慎之助さん、杉良太郎さんら、顔の迫力がある俳優がそろう中、吉川さんも負けていません。
黙って考え込む顔、思い通りにいかず悩む顔、驚き感心させられる顔など、あまりセリフを発していないのに、それらの感情が伝わってくるのです。ただ、吉川さんの顔をよく見ると、目や口などのパーツはあまり動いていません。それなのにここまで感情が伝わってくるのは、パーツなどの小手先ではなく、これまでの生き様で培った“顔全体で醸し出すオーラ”があるからではないでしょうか。
もう1つの見せ場は、身長189cmの阿部さんと対峙するシーン。ここでも長身の阿部さんに全く引けを取らず、むしろ逆三角形の肉体美で圧倒していることも、吉川さんの存在感を際立たせています。高校生で水球日本代表に選ばれた強靭な肉体はいまだ健在なだけに、黙ってそこに立っているだけで絵になってしまうのでしょう。