日本におけるハロウィンは、もはや本来の収穫祭や魔除けといった意味合いからかけ離れた、国を挙げてのコスプレイベントに変わり果てた。この盛り上がりには賛否両論が巻き起こっている。
T.M.Revolutionことミュージシャンの西川貴教氏はツイッターで、「本来のハロウィンで仮装するのは小さな子供達で、大人がコスプレして我がもの顔でねり歩いたりするもんじゃない」と苦言を呈し、ホリエモンこと堀江貴文氏が「別に何でもありでもいいんじゃないの」と反論したことが話題を呼んだ。
ハロウィンブームによって、大人がコスプレすることへの抵抗感が薄れているようだ。さらに以前は広く共有されていた、「女性でコスプレしていいのは美人だけ」、という“掟”もまた崩れつつある。
いま若者の間で、「ブスもコスプレのうち、それがハロウィン」という標語が流行っているという。ニュースサイトのガジェット通信は、「ハロウィンは、おブス返上の大チャンス」との記事を掲載。「ブスをごまかすハロウィンメイク」のやり方がネットで拡散されるなど、容姿に自信のない女性こそコスプレすべし、という考え方が広まりつつあるのだ。
まさに安倍政権の掲げる「すべての女性が輝く社会づくり」が実現しているわけだが、大きな声ではいえないものの、なかにはこれを苦々しく思う人もいるようで、ネット上では「ブスのコスプレ」に関する批判的意見が噴出している。そんななか芥川賞作家の西村賢太氏が、反発覚悟で声を上げた。
「やっぱり仮装が許されるのはかわいい子だけだと思います。お化けでもお姫様でもどんなにフリフリを着ても許される。しかし、それに乗じて、集団の力を使ってブスな女性までが仮装するのは、厚かましいし見苦しい。顔を隠したり体型をごまかすために着ぐるみを着るとかならいいですが、無自覚にやっているとしたら同情の余地がなくなります。
というのも、ブスな女性は、控えめに生きたほうがかわいらしく見える。自分の分をわきまえて、身を隠すように自ら肩身を狭くして生きてこそ、内面からにじみ出る“美”が出てくるんじゃないでしょうか」
ちなみに西村氏からすると、「あくまでも自分の基準でいえば、世の中の9割5分がブスでかわいい子は5分しかいない。世間的にはかわいいといわれていても、ほとんどがブスに見える」のだという。
彼の理屈に従うと、来年のハロウィン当日の渋谷は、珍しく人気のない一日になることだろう。よくもまあ自分のことを棚に上げて、というツッコミが全国の女性から聞こえてきそうだ。
※週刊ポスト2015年11月20日号