一人っ子政策の余波は至る所で顕在化している。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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低収入の男子が結婚できないというのなら何人かで一人の妻を共有することを考えてはどうだろうか――。
大学教授がミニブログで発して提案が中国で大きな話題を呼んでいる。掲載されたのは『観察者ネット』上でのこと。ミニブログの主は、浙江財経学院の謝作詩教授である。発言はおそらく、現在の中国における男女の人口比の歪みから、結婚できない男性が近く巷にあふれるとの指摘を受けたものだ。
それにしてもあまりにも非現実的な指摘に対しネットでは批判が殺到した。
●こんな売名をしても、汚名が広がるだけだ。
●西側経済教条主義者め!
●あんたに娘はいるか。だったらオレたちがグループで嫁にするよ。
法律や制度の側面から考えても実現可能性のある話ではないのだが、こうした話題が盛り上がることこそ中国の〝いま〟を見事に反映しているのではないだろうか。
というのも、多くの問題がこの人口比の歪みから生まれているからだ。なかでも大きな話題となっているのが犯罪である。
西安交通大学の人口発展研究所所長の李樹茁教授が主導して行った調査、〈中国における男女不均衡問題と公共安全 百村調査及び検出された問題〉によれば、すでに農村部においては青年の結婚難が大きな社会問題となり、そのことが多くの犯罪を誘発しているというのだ。
この調査で指摘された問題のうち、農村部で広がる犯罪のなかには婦女を売買する問題や金銭での婚姻、結婚詐欺の横行などがあり、なかでも結婚詐欺の広がりは深刻であった。実際、調査対象として協力してくれた364の町村のなかで、30%の町村で結婚詐欺の被害が確認されたというのだ。
統計資料である〈中国衛生年鑑〉によれば、中国では1971年から2012年までの間に計2億7000万もの人口流産が行われてきたという。その結果が、これほど重い課題となって中国社会にのしかかっているというのも皮肉な結果だ。