「えっ?」こんな分野の専門雑誌があったの? と驚く人もいるが、充実した特集でその道のプロから愛されているのが業界雑誌だ。日報ビジネスが発行する『食品包装』(本体1619円=税込、毎月5日発売)を紹介しよう。
瓶や缶、ペットボトルはもとより、お菓子の袋、コーヒーフレッシュの容器。最近では鮮度を保てる醤油のパッケージが浸透しつつあるが、そういった食品包装全般を同誌は扱う。同誌編集デスクの吉沢文雄氏が解説する。
「年間購読で読んでくださる方がほとんどで、公称2万部を発行しています。現在のタイトルになったのは2006年からですが、前身雑誌『新しい包装』の創刊は1957年。黎明期から食品包装に関する情報発信をしてきました」
具体的にはどういった情報か。
「ヨーグルトを開けたとき、蓋の裏側にヨーグルトがくっつかないような技術を開発した会社がありました。蓮の葉が雨を弾くように、高い撥水性のある蓋材を開発したわけです。乳業会社では蓋の裏に付着する分を見越して多めにヨーグルトを入れているところもあるといいますし、何より食品の無駄を省けるとあって、いち早く報じました」
また、コンビニ各社がテイクアウトコーヒーに進出する際には、それに先駆けてカップや蓋、ストローといった包装に関しても動きがあるだろうと注視し、特集を企画し報じたという。
連載も充実している。特に人気なのが「今日なに食べた?」だ。
主婦のグループが執筆するこの記事は、実際に毎日の食事を作る主婦の目線で食品の包装を論じる名物連載。たとえば、ウインナーは複数をまとめて売るためよくテープ止めされるが、これに対して「表示も見にくいし、捨てるときにあちこち貼りついて厄介」のように、寄せられた苦言をストレートに紹介している。
1年以上にわたり連載している「軟包装時代の新・ヒートシール講座」も実用的価値が高いと評されている。
「熱溶着の技術を論じた専門的なものですが、バックナンバーを全部ほしい、というお問い合わせもありました」
惜しまれつつ終了した「中国で“アイヤー!”と叫ぶニッポン人」も、中国の食品事情を通じて国情が窺えると好評だった。
今後訪れるかもしれない食糧難の時代には、長期保存など食品包装技術の向上が必須。今から業界を注視しておいても損はないかもしれない。
※週刊ポスト2015年11月20日号