妻をがんで亡くした西日本在住の男性・Aさん(71)は、バスの車内広告で目にしていた『家族葬9万円』を謳う葬儀社に葬儀を依頼することにした。「あなたの今後の生活もある。私の葬儀は大袈裟なものにせず、お金を節約してほしい」との妻の遺言もあり、近い親戚と数人の友人に集まってもらう程度の規模で、費用を抑えて行なおうと考えたからだ。
早速業者に電話。病院まで寝台車で遺体を引き取りに来てもらい、妻の亡骸はその葬儀社の会館へ運ばれた。ところがそこでAさんは驚愕の事実を知る。「基本プラン」だと提示された葬儀は52万円だった。
もちろん「話が違う」と抗議。別の葬儀社に連絡をとろうとすると、「すでに費用が発生している」と寝台車料金、会館使用料、人件費で16万円を請求された。改めて広告を確認すると「病院や斎場への搬送費用、火葬費などは別料金」と小さな文字で書かれていた。
「結局、必要最小限の38万円のプランで契約せざるを得なくなりました。しかも運転手や手伝いの女性、火葬場の担当者などへの心付けをはじめ、お坊さんへのお布施など、そこからさらに約40万円を支払うことになった。
広告に書かれていなかった出費ばかりで立腹しています。だが葬儀を無事終えるためには請求された通りに支払うしかなかった。想定外の資金を使い、これからひとり暮らしが始まるというのに不安で仕方がない」(Aさん)
※週刊ポスト2015年11月20日号