中国の習近平主席によるトップ外交の様子が注目を集めている。9月下旬の米国訪問に続き、英国でもエリザベス女王に歓待される様子が報じられた。しかし作家の落合信彦氏は、この習近平訪米を正確に分析して、日本の将来に備えるべきだと訴える。
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いま、米中関係は大きな曲がり角を迎えている。日本の将来を左右する問題なのに、新聞もテレビもその重要性がまったくわからないから、的はずれな分析しかできない。
習近平は9月下旬、国賓としてアメリカを訪れ、オバマとの会談などに出席した。習近平の今回の訪米からは、多くのことが読み取れる。
肝心なのは、「米中の溝が決定的になった」ことと、「これで世界はますますジャングル化する」ということだ。
アメリカに入った習近平がまず訪れたのは、西海岸のシアトルだった。そこでは「米中ビジネス・ラウンドテーブル」という会合が開かれた。
迎えたのは、アップルCEOのティム・クック、アマゾンCEOのジェフ・ベゾス、フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグら名だたる企業のトップたち。中国側もネット通販大手のアリババCEO・馬雲(ジャック・マー)や検索サイト大手・百度社長をはじめとする大企業のトップ10人以上が揃い、それをもって習近平の“動員力”と、アメリカ側の歓迎ぶりを報じるメディアもあった。
だが9月24日、習近平がシアトルからワシントンに入ると、雰囲気は一変した。
その2日前にワシントン入りしたカトリック教会の最高指導者であるローマ法王はオバマ夫妻と副大統領のバイデン夫妻が迎えるという異例の歓迎ムードだったが、習近平の場合はバイデン夫妻だけだった。
もっとも、ローマ法王と習近平の「格」など比べるべくもない。あつかましいことに、中国側はローマ法王の訪米日程をずらして欲しいと依頼までしていたが、アメリカ側が拒否したのは当然だ。
9月25日の共同記者会見では、オバマと習近平は目を合わせることもなかった。
「人権尊重」を訴えるオバマに対し、習近平は「国ごとに、それぞれ異なる歴史や国情がある」と応酬。サイバー攻撃問題については習近平が「中国も被害者だ」と白々しく述べたのに対し、オバマは「場合によっては経済制裁もありうる」と返した。このやりとりの間、2人の表情は硬いままだった。
首脳会談は明らかに失敗で、米中の溝が露わになっただけだった。
※SAPIO2015年12月号