国内

認知症患者の家族が訴えられるリスク ボール訴訟で流れ変化

 10月28日、73歳の認知症の男性がJR宮崎駅前で起こした「暴走事故」では、6人の歩行者がはねられ、2人が死亡した。同様のケースで認知症の患者本人に責任能力が認められない場合は、被害者から家族が訴えられる例も少なくない。

 2007年には愛知県で91歳の男性が徘徊の末、線路内で列車にはねられ死亡した。妻と長男の妻が目を離した隙の出来事だったが、鉄道会社側が列車遅延の損害720万円を求めて遺族を訴えた(双方が上告中)。介護する家族は、損害賠償を求められるリスクと常に隣り合わせということだ。

 ただし、「流れが変わってきた」と話すのは、東京弁護士会高齢者・障害者の権利に関する特別委員会の副委員長を務めた元橋一郎弁護士である。

「今年4月に最高裁で出た判決が注目されています。児童が蹴ったボールを避けたバイク運転中の男性が転倒し死亡した事故で、遺族が児童の親を相手取って損害賠償を求めていましたが、監督義務が狭く解釈され、親が免責されたのです。これは認知症高齢者のケースにも影響するでしょう」

 では、車の暴走事故はどうか。

「人身事故は責任能力なしでも自賠責保険で死亡は3000万円まで保険金が出る。上限を超える高額請求は、任意保険がカバーしています。ただし物損については責任能力がなければ、家族に責任が及ぶケースもあり得ます」(元橋弁護士)

 もちろん免責や保険があるから乗ってもよい、とはならない。責任の有無に関係なく、被害者の命は戻らない。本人の免許返納だけでなく、家族が車のキーの保管場所を変えるなど、工夫や努力が必要となる。

※週刊ポスト2015年11月20日号

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