空前の“特許ブーム”が到来している。それは、「大会社」VS「町工場」の間で起こる、特許を巡るバトルが繰り広げられるドラマ『下町ロケット』(TBS系)の影響だけではない。
ノーベル賞を受賞した大村智教授(80才)が保有していたワクチンの特許の一部を放棄したことで多くの人々の命が救われたことや、小学6年生が「アルミ缶とスチール缶を自動分別するゴミ箱」を発明して特許を取得したことなど、多方面から注目が集まっているのだ。しかし、そもそも特許ってどういうものなのか?
『一人で特許「実用新案・意匠・商標」の手続きをするならこの1冊』(自由国民社刊)著者で、発明学会会長の中本繁実さんが説明する。
「特許権(物品の形状や構造などの権利)、意匠権(模様やデザインなどの権利)、商標権(商品名やロゴマークなどの権利)などは、知的財産権のひとつです。わかりやすく言うと、“新たに創作した物に与えられる権利”のことです」
ノーベル賞やロケットといわれると縁遠いように思えるが、過去にはごく普通の主婦が、生活グッズの特許で数億円を儲けたこともあり、私たちにも“一攫千金”のチャンスはある。何かひらめいた時に、どうすれば特許が取れるのか。
「発明したら特許庁に特許出願し、審査の請求をします。同じアイディアがすでに出されていないかどうかは、特許庁(工業所有権情報・研修館)の情報プラットホーム(J-Platpat)というサイトで調べることができるので、事前に確認しましょう」(中本さん)
自分のアイディアと同じものがなければいざ出願だが、出願書類には聞きなれない用語が並び、素人ではなかなか理解できない。作成を専門家に頼めば、その費用だけで数十万円かかることもある。発明学会ではそんな個人の発明家に書類作りを指南している。
「出願はタダではできないので、個人で出願する場合、少しでも費用は抑えたほうがいいですからね」(中本さん)
実際、特許を取得するまでにかなりのお金がかかる。まず、出願料は1万5000円。その後、審査をしてもらうために「特許出願申請請求書」を出願から3年以内に提出することになる。その際にかかる費用は、平均で16万円程度。審査にかかる期間は平均で19か月だが、短い場合もあれば時間がかかる場合もある。特許が認められた後には、数千~数万円(年数によって変わる)の登録料も支払わなければならない。
だからこそ、審査の請求にはみな慎重なのだという。
「出願したら、“特許出願中です”と、そのアイディアを企業に売り込みます。出願から3年間は、審査請求をしなくても、アイディアは守られるので、その間に企業に売り込んで、気に入ってもらえたら企業と契約を結び、商品化に向けて動き出すのです。ですから、3年以内にそうしたスポンサーがつかなければ、審査請求をしない人が圧倒的に多い」(中本さん)
※女性セブン2015年11月26日号