日本の「防諜」の欠陥はかねてより憂慮されてきた。特に大きな問題となっているのが、中国人の諜報活動である。産業、防衛、政治あらゆる局面に、中国の諜報活動の影が見て取れる。
彼らはどうやって情報を入手しているのか。公安当局関係者が解説する。
「諜報活動は、大きくソ連型と中国型に分類できる。ソ連型は、自国の諜報機関で養成した諜報員をターゲットに接近させる、もしくは組織に潜入させて機密情報を入手する手法です。
この中にはハニートラップも含まれており、要人に色仕掛けで情報を得る、または行為に及んだところを写真に撮って脅します」
かつて“共産主義の兄弟”といわれたソ連から、中国も諜報活動の影響を受けてきた。「ソ連型」工作で日本の政治家を籠絡した疑いもある。
故・橋本龍太郎首相は、1996年、駐日中国大使館への勤務経験を持つ中国人通訳女性との関係が取り沙汰された。後に、女性は北京市公安局の情報工作員だったことが判明する。二人の出会いは、ホテルニューオータニのロビーで、女性が橋本氏の前でハンドバッグを落として拾ってもらったことから始まったとされる。
橋本首相は中国へのODA事業などを積極的に進めた。だが、女性の存在が影響していたのではないかとの疑いを持たれることになった。
ハニートラップといえば、2004年の上海総領事館の領事館員の自殺事件も有名である。
上海のナイトクラブに通っていた領事館員は、ホステスとの交際などをネタに、中国公安の「協力者」となることを迫られた。領事館員は思い悩み、領事館内で自殺した。
これらはキーマンを狙ったソ連型の一本釣り作戦だ。
※SAPIO2015年12月号